<ソフトバンク4-3楽天>◇14日◇ヤフオクドーム

 ソフトバンクが今季6度目のサヨナラ勝ちだ。延長10回1死満塁。代打松中信彦内野手(40)が自身99年以来となるサヨナラ押し出し四球を選んだ。柳田悠岐外野手(25)は8回に同点打、10回も右前打で突破口を開き、決勝のホームを踏んだ。若手とベテランの力がかみ合った勝利。今日15日から4ゲーム差の2位オリックスと敵地で3連戦だ。

 最後は3冠王の貫禄が上回った。10回1死満塁。楽天が右腕菊池を告げると、こちらは当然「代打松中」のコール。今、最も球場を沸かせる男だ。「最低でも外野フライと思った」。数々の修羅場をくぐった実力者は初球をフルスイング。「ボール球は振らないでおく。際どいコースはストライクになると相手が有利になるので手を出そう。代打は心理戦です」。プロ18年目。経験値が違う。後は4球連続でボールを選ぶだけ。「最後は僕が決めましたが、チームメートがチャンスをつくってくれました」。仲間のバトンを握り、自身15年ぶりのサヨナラ押し出し四球に結びつけた。

 地力の差で楽天を2点差から追い上げた。6回に李大浩のソロで1点差。8回2死一、三塁では柳田が代わったばかりの金刃から同点打を放った。「左中間にいたおじさんが『頼む、仕事してくれ~』と叫んでいたので。何とか仕事できました。その声のおかげです。ありがとうございます」。おじさんの「好アシスト」で振り出しに戻した。

 サヨナラ劇もまた柳田の右前打から始まった。1死から出塁し、二盗を決めると、長谷川敬遠、明石も四球を選び、代打松中へとつなげた。9回に楽天の満塁策を突破できなかった嫌な流れを変えた。「負ける雰囲気のゲームでしたが、大逆転できてうれしいです」。お立ち台では25歳と40歳が並んだ。球団が次代の4番候補と認める逸材と、元4番だ。シビアな世代交代を象徴するツーショットは、常勝軍団への道を進むチームの今を物語っていた。

 松中には失地回復にもなった。10日の日本ハム戦は決勝打を放ち、2年ぶりのお立ち台で男泣き。ところが、翌11日の故郷熊本への移動日にスーツの正装ではなく、ハーフパンツ姿だったため注意を受けた。昔かたぎで、少年のような心もある男らしい行動だが、しゅんとなって反省。グラウンドで報いた。秋山監督も「よく四球を選んだ」とこの日の仕事ぶりに文句はなかった。

 お立ち台の最後、その松中がマイク越しに叫んだ。「8月、9月に強いチームが必ず優勝する。僕は18年目。経験していますが、本当に強いと思います」。今日から2位オリックスと首位攻防戦。独走態勢に入るなら、このタイミングだ。【押谷謙爾】

 ▼40歳の松中が押し出しの四球を選び、ソフトバンクは今季6度目のサヨナラ勝ち。松中のサヨナラ四球は99年8月3日ロッテ戦以来、15年ぶりだ。四球、犠飛を含めサヨナラの打点を記録した40代選手は13年8月20日中村(DeNA)以来だが、ソフトバンクではダイエー時代の91年8月8日に43歳の門田がサヨナラ本塁打を打って以来。