<ヤクルト2-1巨人>◇20日◇神宮

 ヤクルトに漂う前夜からの不穏な雰囲気を、プロ20年目の相川亮二捕手(38)が振り払った。4回2死二塁。11試合ぶりスタメンのベテランは、小山の甘く入ったフォークを逃さなかった。「次が投手なので、何とか自分がという気持ちがあった」と先制の右越え適時二塁打に。これが決勝点となり、チームの連敗を3で止めた。

 勝利だけを欲していた。前日19日、バレンティンとバーネットがベンチで乱闘騒ぎを起こした。延長戦での敗戦に影響したとも思えるが、相川の見解は違った。「みんな勝ちたい。その中でああいうことが起きた。でも、それで負けたんじゃない。力がないから負けたんです。雰囲気が良ければ勝てるかといえば、そうじゃないでしょ」。2人が原因の「特別な敗戦」にはせず、チーム全体での「1敗」として受け止め、次の1勝だけを見据えていた。

 そのためには、助っ人相手でも信念は揺るがない。ナーブソンは序盤から制球が乱れたが「緩急を使わないと」と辛抱強くカーブを要求。投げ続けて修正させ、他の球種を生かした。バーネットにも「気を使ったりはしない。彼もプロ」と腫れ物にせず、いつもの強気なスタイルを貫かせた。

 小川監督から「相川のおかげ」と最大級の賛辞を贈られた。だが、浮かれない。「使ってもらえれば勝てるようプレーをするだけ。今までと変わりません」。最下位ながら、ヤクルトには勝利にこだわる、頼もしい男がいる。【浜本卓也】