<日本ハム8-5西武>◇23日◇札幌ドーム

 日本ハム大谷翔平投手(20)のバットが、試合を決める貴重な追加点を生んだ。最大5点のリードが2点に縮まって迎えた7回無死一、二塁の好機に、中前適時打を放った。野手出場に限れば4試合連続安打。3打数2安打1打点に今季初盗塁も記録するなど奮闘した。投手としては未勝利と苦しんでいる8月だが、月間打率は3割1分8厘。打撃でチームに貢献している。

 空気は、肌で感じていた。「嫌な流れだった」。試合を左右する貴重な打席だと、大谷は自分を奮い立たせた。7回無死一、二塁。カウント3-1と優位に進め、ストライクを取りに来た直球を狙い打った。試合を動かし、勝負を決める中前適時打。「しっかりとセンター方向に打てて良かったです。流れが相手にいきそうなところでの1本だったので、いい形で追加点が奪えました」。球場の空気は、すっかり変わっていた。

 5回に勝利投手の権利が目前の吉川が降板。直後に2番手・河野が西武中村に3ランを浴びた。最大5点あったリードが2点に。6回も1死一、二塁、7回にも1死一、二塁と攻められ、主導権は完全に奪われていた。栗山監督は「ウチがやられる展開。よく打ってくれた。大きな適時打だった」と称賛。チームを救う貴重な一本だった。

 非凡な野球センスが凝縮されていた。西武は直前で、左腕の宮田にスイッチした。プロ入り6年目で、1軍登板はわずか13試合目の投手。初対戦だった。投手交代が告げられるといったんベンチに戻り、スコアラーに聞いた。「どういう軌道ですか?」。言葉の情報だけで、イメージを作り上げた。「ボールが先行してラッキーだった」と振り返るが、しっかりと見極め、最後は甘い球を見逃さなかった。

 暑い夏場、当然疲労はたまる。投手としては7月16日を最後に白星から遠ざかってもいる。だが一方で、野手としては4試合連続安打。8月の月間打率は3割1分8厘と高打率をマークしている。8月以降1割6分3厘と低迷した昨季とは、根本的に違う。栗山監督は「打つ方は技術が上がった」と言う。疲れても崩れない打撃フォームと、修正能力の高さで、大きく打率を落とすことはなくなった。

 投手としては次回、26日ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)に先発する見込み。「(投打を)別々には考えているけど、打たないよりは打った方が気分がいいので」。自身のバットで弾みをつけ、10勝目を狙う。【本間翼】