<広島2-1阪神>◇23日◇マツダスタジアム
91球目だった。8回先頭。26人目の打者会沢に投じた阪神能見篤史投手(35)の134キロのチェンジアップは、左中間スタンドへ消えた。均衡を破られるソロアーチ。貫いてきた鉄仮面は、それでも変わらない。だが2死からも菊池にソロを浴びた。孤独なマウンドには無残な結末が待っていた。無援護で自己ワーストの11敗目を喫し、己を責め続けた。
「何もないよ。コメントしようがない。粘っていないよ。結局点を取られているし。先に点を取られたのがすべて」
好調だった。初安打を許したのは5回の先頭。最速147キロを計測し、変化球でも空振りを奪った。7回に無死三塁のピンチを背負ったが、梵、小窪を連続三ゴロに抑え、最後は田中を空振り三振。表情は変えないまま、グラブをはたいて喜びを表現した。
勝ちたい思いは塁上でも現れた。先頭打者だった5回に四球で出塁。2死から鳥谷の内野安打で二塁に進んだ。ゴメスがファウルで粘る間、スタートを切り続けた。さらにフルカウントで自動的に切るスタートでも常に全力。「仕事なのでね。どうこうはない」。
マートンの退場、無援護、ピンチ…。早々に崩れる要素に囲まれながら、耐えた。8回6安打2失点で完投。要した球数はわずか105球だった。中西投手コーチも「辛抱して投げた。よく投げたよ。本当に」と力投をたたえた。勝ち星は遠いが、状態は上向きだ。「能見よう投げたぞ」。バスに乗る際にはファンの温かい声援に包まれた。【池本泰尚】



