<巨人4-3阪神>◇26日◇東京ドーム

 追い込むはずが、崖っぷちに立たされた。虎が巨人との決戦第1ラウンドでショッキングな黒星だ。先手を取って宿敵に肉薄する目前の9回裏、守護神呉昇桓投手(32)が抑えきれず、逆転サヨナラ負け…。2・5差となり、今カードでの奪首は消滅。それどころか、今日27日に敗れれば、阪神の自力優勝の可能性が消滅する。

 和田豊監督(51)もショックを隠しきれなかった。最後は大和の懸命なバックホームも間に合わなかった。白星そして0・5ゲーム差、貯金10に長期ロード勝ち越し…ラストイニングで全てが消えた。万全に送り出した呉昇桓で、今季5度目のサヨナラ負け。天国から地獄へ落ちた指揮官は、しばらくイスから立ち上がれなかった。

 「もったいない?」

 「それしか言いようがない」

 「呉昇桓で負けたら割り切るしかない?」

 「それに関してはその通りやな」

 「メッセンジャーの続投は考えなかった?」

 「うん、うん」

 ロペスのヒーローインタビューが響くベンチ裏でも、和田監督の目はうつろだった。問いかけに相づちを繰り返す。4番が打った。エースが抑えた。なのに、負けた。現実を受け入れるまで時間がかかるほど、黒星の味を拒絶していた。

 苦手杉内を崩した。ゴメスが先制弾、対左で起用した新井良が続き、手塩にかける上本&大和のコンビが機動力を生かして3点目を奪った。G倒先陣を託したメッセンジャーも好投。守備固めも出した。9回表までは満点に近かった。

 最後を託した絶対的守護神が痛打された。先頭阿部に、真ん中に入った136キロを二塁打された。村田はあっさりと右犠飛。同点で終わらず、矢野へ四球を与えた。勝負球が高く、キレもない。捕手鶴岡はワンバウンドを止められずに2度の暴投を記録した。呉昇桓は責任を背負い込んだ。

 「いつもと同じようにマウンドに上がったけど、結果が悪かったので言うことはない。明日から切り替えてやるだけ」

 悪夢がよみがえる。昨年の同時期、4連勝で5ゲーム差にして乗り込んだ東京ドームで3連敗した。勢いを失ったチームは9月に失速。事実上の終戦となった悔しさは、いつまでも忘れない。和田監督は球場入りで「ここからの戦いをどうするか、常に頭に置いてキャンプからやってきた。それでこの舞台に立っている」と意気込んでいた。盤石のタクトだっただけに、余計に悔しさが募る。

 今日27日に連敗すれば、自力優勝の可能性が消える。土俵際へ押し込みながら一転、俵に足をかけてしまった。和田監督は「今日落としたから、より明日が大事になってくる。もう1回いきます」と、最後にようやく前を向いた。今こそ、1年間の思いをぶつける時だ。【近間康隆】

 ▼阪神の今季サヨナラ負けは5月8日の中日戦(ナゴヤドーム)、同13日広島戦(どらドラパーク米子)、同31日日本ハム戦(札幌ドーム)、6月3日楽天戦(コボスタ宮城)に続き今季5度目。リードしてからのサヨナラ負けは楽天戦(3-0)と今回の巨人戦(3-2)でいずれも呉昇桓が打たれている。また巨人戦で、最終回にリードしていた展開を一気にひっくり返された逆転サヨナラ負けは、06年4月21日以来、8年ぶり。2-1とリードして迎えた延長11回裏、久保田が李承■に逆転2ランを打たれた。<呉昇桓救援失敗>

 ▼5月28日西武戦(甲子園)

 5-4リードの9回に登板。無死一、二塁で脇谷のバント処理をミスして同点。無死二、三塁で栗山を空振り三振に仕留めたものの捕手日高の股間を抜け決勝点を献上、自身初黒星。

 ▼6月3日楽天戦(コボスタ宮城)

 9回3-1とリードの無死三塁で登板。犠飛で2-3。2死一、二塁で牧田に逆転サヨナラ三塁打を浴びる。

 ▼7月22日巨人戦(甲子園)

 2-1とリードの9回に登板。2死から代打高橋由に同点被弾。試合は延長戦にもつれこんだ末、12回裏、福留の本塁打でサヨナラ勝ちした。※■は火ヘンに華