<楽天4-3ソフトバンク>◇8月31日◇コボスタ宮城

 自らの可能性を広げる好投だ。楽天武藤好貴投手(27)がソフトバンク戦に2番手で登板。6回1死一、二塁から9回までを無安打に抑える好投だった。白星こそつかなかったが、相手に追加点を与えず、延長12回のサヨナラ勝ちにつなげた。11年ドラフト1位だが、昨季は1軍登板なし。3年目右腕が意地を見せた。

 最後は落差の大きいカーブだった。9回2死二塁。武藤はソフトバンク中村をカウント2-2と追い込むと、思い切り腕を振った。外角への121キロに反応させなかった。見逃し三振だ。6回1死から、計3回2/3を無安打に抑えた。打者13人に対し、許した走者は味方の失策と四球による2人だけ。危なげなく役目を終えた。「球がずっと抜けていたので、低く、低くと思って。嶋さんがカーブを多く使ってくれたので、首を振ることなく投げました。自分の生命線ですから」と納得の50球だった。

 武藤の好投が、勝利の女神を振り向かせた。1点ビハインドの中、追加点を与えなかった。すると、9回に敵失で同点。延長12回の松井稼のサヨナラ打につながった。9回は同点に追いつき、なお1死三塁のサヨナラ機があった。後続を断たれただけに、星野監督も「あいつ(武藤)に勝たせてやりたかった」と言った。3年目でのプロ初勝利は逃したが、次のチャンスもあるはず。監督の言葉を伝え聞いた武藤は「ありがたいですね。こういう投球を続けられたら」と、口元をほころばせた。

 11年ドラフト1位の期待に応えられずに来た。優勝した昨季は1軍登板なし。2軍でも12試合にとどまり、成績(0勝1敗、防御率8・87)も振るわなかった。「去年までの悔しさはあります」と正直に言った。若手主体に切り替わった今、同じ中継ぎとして、ルーキーの今野や横山が次々と1軍デビューを飾っている。だから「自分の番が回ってきたら、ちゃんと投げようと思っていました」と気合が入っていた。

 この日は、直球も力強かった。「とりあえず、1人1人と。リラックスして投げました」と、無心で腕を振った結果が実った。今日の移動日を挟み、明日2日からは故郷・北海道で試合だ。「北海道でも投げられるように準備したいです」と口元を引き締めた。【古川真弥】