<ロッテ3-2西武>◇9日◇QVCマリン

 勝負強さを見せつけた。西武森友哉捕手(19)が1点ビハインドの9回に代打で登場し、一時逆転となる4号2ランを右中間スタンドへ運んだ。ここまでの4本中3本が代打での1発。2リーグ制後、高卒新人の代打3発はプロ野球史上初の快挙。試合はサヨナラ負けしたものの、やはり、このルーキー、ただ者ではなかった。

 森は初球を迷うことなく振り抜いた。代打を託された9回1死二塁。ロッテ西野のフォークをたたくと、打球は右中間スタンドで弾んだ。8月16日の日本ハム戦(西武ドーム)以来となる会心の手応え。「初球から振ろうと思っていたので、思い切って打てたと思います」とうなずいたが、サヨナラ負けに笑顔はなかった。

 プロ1号から3戦連発の離れ業を成し遂げてから、27打席ぶりのアーチ。清原、松井という歴代の強打者もなし得なかった偉業の陰で、ルーキーは1つの壁と向き合っていた。期待されるのは新人離れした打棒。その重圧が、少しずつ打撃フォームを変えていた。「自分が1軍に呼ばれてるのは、打撃だと思ってます。だから、打たないといけないと、思いすぎてました。気が付いたら、バッティングが小さくなってました」。結果を出さなければいけない、という強い思いが、持ち味の思い切りの良さを消し、ボールに当てにいく打撃となっていた。

 三振への不安もこぼした。「高校(大阪桐蔭)時代は公式戦で三振は5個ぐらいしかなかったと思います。そこだけは自信があったんです。でも1軍に上がってから、三振かヒットしかない。ショックでした」。まるで3本の本塁打は忘れたかのようだった。

 その壁を乗り越えるために選んだのは、「開き直る」ことだった。5日からの福岡遠征中、自身の3本塁打を見直した。全て、打ち終わりで左手がバットから離れるフォロースルーがあった。「もう1回、原点に返ってフルスイングを思い出さないといけない」。打撃フォーム自体は変えることなく、フィニッシュを打撃練習から意識し直した。

 結果を恐れず、自分の良さを貫く-。初球から思い切り、大きなフォロースルーで振り抜いたこの日の1発。森の覚悟が、詰まっていた。【佐竹実】

 ▼西武森が今季3本目の代打本塁打。高卒新人で3本の代打本塁打は84年藤王(中日)の2本を上回り、2リーグ制後最多。これで代打成績は10打数6安打と勝負強い。スタメン出場時の1本と合わせた今季の全4本塁打のうち、8月15日の2号が先制、同16日の3号が同点、この日の4号が逆転と3本連続で肩書付きの殊勲アーチとなった。