<阪神2-6巨人>◇11日◇甲子園

 巨人沢村拓一投手(26)が、阪神との今季レギュラーシーズン最終戦で7回2失点と好投し、甲子園では1999年以来15年ぶりとなる3連戦3連勝に導いた。6回まで22イニング連続無失点と安定した投球で阪神打線を寄せ付けず、今季4勝目(3敗)。リーグ一番乗りで70勝に到達し、貯金は今季最多の17。5日に消えた優勝へのマジックナンバー「16」も再点灯した。

 ピンチにも、沢村は冷静だった。7回、2点を奪われ、なおも1死一、二塁。ゴメスを打席に迎え、球審に要求したのはボールの交換だった。「自分のフィーリングもあるので。あそこは落ち着いて」。自ら間合いを作って、3球連続フォークで空を切らせた。自身が「フォーク地獄」と表現する完璧な攻めだった。

 「甲子園物語」を完結させた。剛腕らしく、初回からエンジン全開。150キロを超える速球、変化球をストライクゾーンに集め、攻め立てた。本人は「シュート回転していた」と反省も忘れなかったが、沢村のパワーがあれば十分。1死球は与えたが、安定した制球と冷静なプレートさばきは成長の跡だった。

 スコアボードに刻まれた初回の「4」は、奮い立ったあの夜と重なった。7月13日の阪神戦で7回途中5失点でKO。関本の逆転満塁弾に散った。午前0時ごろ、1度は寝床に入ったが眠れなかった。「どうしようもなくて…」と向かったのは、東京・お台場の大江戸温泉物語だった。人もまばらな湯船に入った。その時だった。「巨人の沢村君じゃないの?」。中年男性に声を掛けられた。

 「今日は惜しかったねぇ。あの1発が、もったいなかった」。作り笑いを浮かべてみたが、痛恨のシーンが頭によみがえった。一瞬ムッとしたが、すぐにわれに返った。ケガからはい上がる苦しみを知った男は変わった。男性の声に耳を傾け、ざっくばらんに語り合う中でファンの思いを知った。「話してたら、盛り上がっちゃって。最後は一緒に飯を食った」。歯がゆさ、悔しさを次への糧に変えると誓った。

 3連覇を占う9連戦の1カード目を3連勝で突破。甲子園での達成は15年ぶりだった。広島が敗れ、ゲーム差は4。マジック16を再点灯させた。原監督は「安定感があった」と沢村の好投を評価した上で「なかなか甲子園での3連勝はないわけですから。運もあった」と評価した。9月に入って、優勝を争う広島、阪神に3連勝。トリを飾ったのは沢村だった。「投げる試合は全部勝つつもりで頑張ります」。盟主がスパートに入った。【久保賢吾】

 ▼巨人が阪神3連戦に3連勝は13年8月27~29日以来だが、甲子園球場の3連戦3連勝は99年7月16~18日以来、15年ぶりだ。これで今季の阪神戦は13勝11敗となり、3年連続の勝ち越しが決定。通算では999勝777敗67分けで、史上初の同一カード1000勝に王手をかけて今季の阪神戦を終了した。<99年7月甲子園での阪神3連戦3連勝>

 ◆16日(7-0)

 2回に元木の押し出し、マルティネスの二塁打などで一挙6得点。8回には松井の25号でダメ押し。先発ガルベスは5安打完封した。

 ◆17日(11-7)

 高橋が23、24号本塁打を放てば、松井も2打席連続の26、27号。初のダブルアベック本塁打で大勝。先発の斎藤雅は6回1失点で4勝目。

 ◆18日(3-2)

 3回に村田真の5号で先制すると、6、9回にも加点。ルーキー上原は7安打2失点で完投。8連勝で12勝目を挙げた。