<阪神2-6巨人>◇11日◇甲子園
ナインの目を覚まさせる強烈な弾道だった。6点を追う7回無死一塁。代打起用された阪神西岡剛内野手(30)は腹を固めていた。沢村の2球目だ。外寄りの甘いシュートが飛び込んできた。「来た!」。迷わず、力強く振り抜かれた白球は高く舞う。右翼上空への大飛球。右翼橋本もフェンス手前でジャンプ。差し出すグラブからこぼれ、フィールドにはずんだ。
あと1メートルの飛距離があればアーチになった、豪快な打撃で無死二、三塁の絶好機を築く。上本の適時打で2点を刻み、首位巨人に意地の抵抗だ。「風かな。展開が展開だった。思い切って行くしかない。まあ、良かったです」。気迫、執念、闘争心…。5連敗中でワンサイドゲームだった。あきらめムードが充満していたが、忘れかけていた熱さを体現した。試合の流れ、チームの雰囲気をガラリと変える勝負師は健在だ。甲子園でのナイターこそ存在を証明できる居場所なのだ。
「阪神ファンは温かい。こんな状況なのに、スタンドを埋め尽くしてくれる。ああいうケガをして1回上がって、ずっと1軍にいられたら良かったけど、もう1回、ケガをした。打席に立つとき、雰囲気をつくってくれて、試合には負けたけど個人的にはうれしい」
今季は屈辱にまみれたシーズンだ。2軍暮らしが長く、それでも腐らず、信念を曲げることもない。2軍戦で活躍しても多くを語らなかった。ポリシーがある。関係者には「2軍の選手が目立ってはいけない」と漏らす。1軍の主力が故障で2軍降格している境遇なのだ。立場をわきまえていた。1軍の舞台こそが生きる場所なのだ。
窮地のチームを救うため緊急昇格。当初は万全な状態で合流するプランだったが、やむなき事情で前倒しされた。まだ2軍戦で守備にも就いていない。好調な打撃を買われた1軍復帰だった。当面は代打要員でスタンバイする。
「100%じゃない状態でも、チームに必要と言われたら、できる限りのことを全力でやりたい」
今季最大のピンチに陥っている手負いの猛虎軍団に頼もしい男が帰ってきた。【酒井俊作】<今季の西岡>
◆負傷
3月30日巨人戦(東京ドーム)の2回、右翼福留と激突。救急車で搬送され入院した。鼻骨骨折と左肩鎖関節脱臼、左右肋骨骨折などの重傷。
◆75日ぶり
6月13日のウエスタン・リーグ、ソフトバンク戦(甲子園)で実戦復帰。1番DHで先発。
◆1軍復帰
同27日の中日戦(甲子園)に1番サードで先発復帰。この3連戦はいずれも先発出場し、同29日に復帰初安打。その後は右肘違和感を抱え、ベンチスタートに。
◆奇策破り
7月11日巨人戦(東京ドーム)。代打で中前適時二塁打。内野5人シフトを打ち破った。
◆再離脱
同23日、背中の張りのため出場選手登録を抹消。再びリハビリ生活に戻った。
◆実戦復帰
9月5日、ウエスタン・リーグ広島戦(鳴尾浜)に1番DHで復帰。復帰4戦目の10日同オリックス戦では3ランなど2安打。



