<阪神8-2広島>◇12日◇甲子園

 遅すぎる、なんて言わないで。阪神がゴメスの同点打に福留押し出し四球で逆転した4回。なおも1死満塁で伊藤隼太外野手(25)が右翼線に2点二塁打。鶴岡が犠飛、藤浪にも適時二塁打が出るつながる攻撃で、後半戦最多の1イニング6得点だ。連敗中の「あと1本が出ない」病もこれで全快?

 やっと、やっとスカッとできた。胸のつかえが取れた。貧打、6連敗、貯金の激減、4位降格の危機…。伊藤隼が積もりに積もったモヤモヤを吹き飛ばした。4回、福井の制球難につけこんで逆転し、なおも1死満塁。簡単に追い込まれたが、4球目の低めフォークを巧みに拾う。強烈なゴロは一塁ベースに当たり、右翼線へ。2者が生還し、3点リードに広げた。連敗中は1イニング2得点がMAX。4日DeNA戦6回以来の3、4点目で泥沼から一気に抜け出した。

 伊藤隼

 点が入ってチーム的にも個人的にも良かったと思う。前の打席で簡単に三振していたし、来た球にがっついてやろうと。若干、ホッとしましたね。

 プロ3年目でようやく1軍に定着した。ワンチャンスに集中する。3回は初球、2球目のフォークに空を切る。最後は内角高め直球に中途半端なスイングで空振り三振に倒れていた。4回は仕切り直しの勝負。追い込まれ、脳裏にあったのが低めフォークだ。「2ストライクだったので、ある程度、頭に入れて。前の打席でああいう形だった。どこかでフォークがあるだろうなと」。失敗を繰り返さず、成長ぶりを示した。

 生き残るヒントはグラウンドに落ちている。打席だけでなく、ベンチでも気を緩めない。同じ左打者への配球に目を凝らすのが日課だ。「今成さん、鳥谷さん、福留さん…。左打者への攻め方をチェックして、打席に立てています」。気持ちのゆとりにデータの裏づけを加え、打者として着実にランクアップ。8月はスタメン出場を重ね、68打数23安打、打率3割3分8厘の好成績だった。どうすれば打てるのか。日々、野球道を突き詰めているのだ。

 1回、鳥谷が二ゴロに仕留められたのは低めのフォークだ。2回、福留もフォークを交えた配球だった。低めに沈む球への警戒を外さず、勝負どころで結果を残す。これに続くように鶴岡が右犠飛、藤浪にも適時打が生まれて、一挙6得点だ。伊藤隼は言う。「結構、高ぶっていましたから」。雑念を振り払って集中する。若武者が、勝負のあるべき姿を体現した。【酒井俊作】

 ▼阪神の連敗は6でストップ。8得点は、8月29日ヤクルト戦(甲子園)の10点以来、12試合ぶり。4回に記録した1イニング6得点は、7月1日ヤクルト戦(倉敷)1回の7点以来、56試合ぶり。