<日本ハム1-0オリックス>◇13日◇札幌ドーム

 初タイトルもあるぞ-。日本ハム大谷翔平投手(20)がプロ入り2度目の完封ショーを飾った。2位オリックスとの3連戦の初戦を任され5安打2四球9奪三振。最速158キロにフォークなど変化球を絶妙に織り交ぜて「1-0完封」を成し遂げ、11勝目。残りのレギュラーシーズンでの登板は少なくとも2試合はあるとみられ、1918年に「13勝&11本塁打」をマークした偉人の背中、そして13勝以上が条件の最高勝率獲得の可能性もある。

 ドラマあふれる完封ショーを仕上げた。大谷が、難しいとされる「1-0完封」をつかんだ。決勝打のキャプテン大引と、お立ち台に立った。隣で男泣きする大先輩に驚きながら、ニコニコと勝者の弁を放った。定番となったベーブ・ルースを例に持ち出されても、はしゃがず、動じない。「何とか頑張りたい。ホームラン打者ではないので、チャンスで1本でも打てるように頑張ります」。伝説の野球選手を視野にとらえる、11個目の白星を並べても平常心だった。

 完全無欠の強さだった。立ち上がりは、ぐらついた。「調子は良くなかった」。1回無死一塁のピンチを三振併殺などで切り抜け、スイッチは入っていった。心身とも乗ったのは6回。2死二塁で、打者は前打席で中前打のヘルマン。カウント1-1からの3球目、真ん中低めのフォークで空振りを誘った。145キロの高速。本領発揮のバロメーターの1球が生まれた。1回からは130キロ台後半に、とどまった。スピードもばらつき、握り、力加減など投げ分けができない球種の1つ。140キロ台中盤前後は投球フォームに付随する、体の動かし方などが理想に近づいた証明だった。

 高速フォークの残像を残したまま、この日最速タイの外角低め158キロで右飛に仕留めた。7回は4番ペーニャから3者連続三振。「粘り切って、しっかりいければいいと思った」。手厳しい栗山監督も「1-0はオレが求めている(エース像の)ところ。よく頑張りました」と褒めた。

 今季で2年目、20歳。ルースと比較される驚異的な成長を遂げ、異常事態も起きてきた。今日14日、米大リーグのフィリーズのルーベン・アマロGM(49)ら球団幹部一行が、球団を異例の表敬訪問することが判明。将来的にメジャー志向を持つ大谷の動向を調査し、関係構築が目的の1つとみられる。この日もバックネット裏からフ軍、ダイヤモンドバックスのスカウトが視察した。同じ高卒新人ダルビッシュ(レンジャーズ)の2年目の12勝に王手をかけたが、本場からの注目度はそれ以上。「踏ん張れたので良かった」と涼しい顔だ。才能の指針になる残す数字も、周囲もヒートアップしてきた。【高山通史】

 ▼大谷が自身初の1-0完封で11勝目。今季の投球回数は148回となり、大谷は最終の規定投球回数(144)をクリア。野手でも20試合以上に先発した「二刀流選手」が最終規定投球回に到達は50年野口二郎(阪急)以来、2リーグ制後2人目だ。現在、大谷は岸(西武)と並び勝率がリーグ1位。野口は1リーグ時代に防御率1位を2度、最多勝を1度獲得しているが、2リーグ制後はタイトルなし。2リーグ制後では初となる「二刀流選手」の投手タイトル獲得なるか。

 ◆最高勝率

 パ・リーグは50年から表彰。85年までは規定投球回以上の投手を対象にしていたが、86年からは規定投球回ではなく13勝以上が条件に。95年平井(オリックス)と99年篠原(ダイエー)は規定投球回未満でタイトルを獲得した。セ・リーグは73~12年に最高勝率の表彰をやめていたが、昨年からパ同様に13勝以上を条件として表彰を復活した。