<日本ハム1-0オリックス>◇13日◇札幌ドーム

 日本ハム大引啓次内野手(30)が男泣きした。7回に値千金の決勝打。お立ち台での明快な受け答えが突然、止まった。言葉を詰まらせながら苦しみをはき出した。「無理言って使ってくれた監督、コーチに感謝したい」。目鼻はみるみる赤く染まり、涙を止めるように目頭を押さえた。プロ入り8年目で球場では初めて涙を流した。「稲葉さんが今年で引退してしまうので、1試合でも長くプレーしたいと思って打ちました」。3万4675観衆の温かい歓声に包まれ、涙はあふれ続けた。

 ふがいない思いが少し報われた。約2カ月前から腰痛などの不調に悩まされるようになった。10日ソフトバンク戦を腰痛で欠場。万全の状態で試合に出場することが、かなわなくなった。満足に練習することも出来なくなり、チームへの申し訳なさだけが募った。強行出場したこの日、勝利に貢献。「喜びもひとしおです」と目尻を下げた。

 心揺さぶられるシーンがあった。両膝に痛みを抱える中田が激走して決勝の本塁に生還。足を引きずりホームを踏む姿と自分を重ねた。「僕なんか、まだまだ甘い」。奮闘する先発大谷らチームメートの思いが最高の治療薬になった。苦悩に立ち向かうキャプテンが、息を吹き返した。【田中彩友美】