<ヤクルト3-5阪神>◇15日◇神宮

 虎が踏ん張った。先手を取られたヤクルト戦で痛快逆転勝ち。8回に神の一撃。前日14日に西岡にいじられたお返し?

 とばかりに、阪神の代打関本賢太郎内野手(36)が決勝打や~。打点を挙げれば7連勝と頼もしいデータもひっさげ、チームに9月初連勝をもたらした。2位広島との2・5ゲーム差を守る大きな勝利。この勢い、続けないといけませんぞ!

 ザ・ピンチヒッターの本領を発揮した。勝ち越し打を放ち、悠々と二塁に達した関本は胸を張る。次打者席でスタンバイしていた西岡に向けた意地の一撃だ。快勝後、クラブハウスへの階段を軽やかに上がりながら冗談を飛ばす。「挑発にカチンと来ていたからね。決勝打はツヨシに打たさないってね」。同点の8回1死二塁。凡退すれば舌なめずりする西岡にチャンスが巡る…。代打のひと振りに生きる男は譲らなかった。

 伏線がある。前日14日の広島戦(甲子園)で適時三塁打を放った西岡から「あの当たりなら、セキさんならシングル」とからかわれていた。ナーブソンの初球、外角スライダーを完璧にとらえると右中間を割った。一塁ベースを蹴って二塁で仁王立ち。どうだ、と言わんばかりの快打にナインも拍手喝采だ。打線に火がつき、一気に4点を奪った。

 「(初球を)狙ってはない。甘いところに来たからね。いいイメージというか、追い込まれるとしんどい。必死のパッチでした。それしかないでしょう!」

 百戦錬磨の先輩にしかできない芸当だろう。実は、神宮は代打泣かせの球場なのだ。三塁側ベンチの裏は選手が出入りするロッカー室だが狭くて満足に動けない。出番を待ち、試合中にウオーミングアップしたい代打要員にとってハンディキャップになる。関本は言う。「他の球場と違う。それと(ロッカー室が)意外にクーラーが効いている。温める場所や時間がないなら冷やさんどこってなる。神宮は難しい」。他球場は走れる通路やティー打撃できるスペースもあるが、セ・リーグの本拠地で唯一、素振りもまともにできない。その場で足踏みだけして打席に向かうこともある。

 不利な環境でも動じない。ナーブソンからは5月4日にも神宮で初球をとらえて決勝適時打を放っており、まさにドラマの再現だった。14日に西岡は「僕は(代打は)初めて。いつも一緒に準備しています」とも話していた。気心知れた後輩の前で、工夫が詰まった好打を見せつけた。

 8回1死二塁になった時点で西岡、関本の代打順でもおかしくないが、和田監督もベテランの勝負強さを買った。「セキはどちらかと言えば、ああいう遅い球や変化球に強い。そこで勝負を賭けてダメでもツヨシがいるから、とっておきを先に出した」。シーズン最終盤に誕生した関本&西岡の代打コンビ。2位浮上に向けて迫力たっぷりの武器になりそうだ。【酒井俊作】

 ▼阪神は最短で明日17日に自力2位の可能性が復活する。条件は今日16日から、広島が巨人戦に●●のうえで、阪神がヤクルト戦に○○または○△。阪神が○△のとき、阪神が18日以降の11試合に全勝し、広島が阪神戦2試合に全敗し他の11試合に全勝した場合、両球団とも最終成績は79勝63敗2分けで5割5分6厘。この場合には阪神が広島戦に勝ち越しているため、セ・リーグ規定により阪神が2位となる。