<日本ハム5-0オリックス>◇15日◇札幌ドーム

 待ち焦がれた白星だ。日本ハム上沢直之投手(20)が3年目で、プロ入り初の完封勝利を飾った。オリックス打線を6奪三振、散発3安打、2四球と完璧に抑えた。7月30日ロッテ戦以来、5試合ぶりの8勝目を快投でつかんだ。8月31日ロッテ戦では完投間近の8回1/3で降板し、ベンチで男泣き。涙を乗り越え、頼もしくなった姿を証明。新人王争いにも猛アピールをかけた。

 涙はなかった。上沢は静かに天を見上げ、ほほ笑んだ。9回1死一塁。完封劇のラストを一塁ゴロ併殺で締めくくった。入団同期の捕手近藤と抱き合い、喜びを分かち合った。お立ち台で最初に吐き出した言葉は「疲れました」。大歓声に包まれながら肩の荷を下ろした。「ずっとチームに迷惑をかけていて、ずっとつらかった。うれしいよりホッとした」と笑顔を見せた。

 最高の相棒と最高の結末を手にした。プロ入り当初、近藤とは夢を描いていた。「いつか1軍でバッテリーを組めたらいいな」。同期との初コンビが実現し「お互い詳しい話はしていない。勝つ、とだけ」と思いを共有。3回まで毎回走者を背負ったが、4回以降は3者凡退を築き波に乗った。

 快進撃の裏で体は悲鳴を上げていた。1軍デビューの今季は球宴前の前半戦だけで6勝。ナイター中心の生活。飛行機や新幹線での長距離移動で持病の腰痛に悩むことが多くなった。8月9日に出場選手登録を抹消されたことを機に、アイシングやマッサージ、電気治療などを本格的に受けた。「治療しながら投げての繰り返し。1年間、頑張ることが目標」と、ひたすら向き合ってきた。

 栗山監督は「今年、いろいろある中で良かったよね」と目を細めた。8勝目を挙げ、ロッテ石川らとの新人王争いにもアピール。前回登板ではふがいない自分にベンチで大泣きした。この日のお立ち台でも涙をこらえるしぐさを見せたが「うれしくて泣いたりはしない」と笑って一蹴した。待望の1勝には満面の笑みが、ふさわしかった。【田中彩友美】