<広島1-7巨人>◇16日◇マツダスタジアム

 巨人菅野智之投手(24)が、クライマックス・シリーズ(CS)仕様の投球で7回2/3を1失点に抑えた。CSで対戦する可能性がある広島を相手に、全114球中、フォークは8球。その一方で、120キロ台のパワーカーブを多投し、嫌なイメージを植え付けた。2位広島とのゲーム差を5に広げ、優勝へのマジックは10。今日17日の同戦に勝てば、一気に1ケタ台に突入する。

 描いた。菅野が頭の中にスケッチしたのは、この日の勝利とその先の戦いも見据えた戦略だった。登板前に描いた構図。冷静なマウンドさばきで色を付けた。「カープは勢いのあるチームなので、勢いを与えないように投げた。嫌な印象を与えるのが大事なので、そこを意識した」。7回2/3を5安打1失点で11勝目を描き、一発勝負のCSへの布石もキャンバスに加えた。

 アクセントをつけた。全114球中、フォークはわずか8球。空振りの取れるウイニングショットの割合は1割にも満たなかった。「(打者が)振ってくれないので」と苦笑いだったが、新たな一手で逆手に取った。22球、2割弱を占めた120キロ台のパワーカーブの多投だった。「縦の変化で勝負ができた」。1色なくても、多彩な色を持つ右腕には関係なかった。

 独特な“視点”は持って生まれた能力だった。「絵がうまいかどうかは、4足歩行の動物を書けばすぐにわかるんです」。白い紙に馬の絵を描いた時、笑顔で言った。絵が下手な人は馬を横から見て、4本の脚を並べて描くが、菅野は奥行きを頭の中で想定して、前脚と後ろ脚を絶妙なバランスで重ねた。「物体を立体的に見るんです。大事なのは想像力」。今にも歩き出しそうな馬の絵が、その証拠だった。

 振り返れば昨年10月17日、広島とのCSファイナルステージもそうだった。シーズン中は5球ほどだったフォークを多投。109球中、20球投げ、完封勝利を飾った。「データになかったと思うので」。淡々と言ったが、大事な局面でやってのける心の強さが支える。原監督は「落ち着いて自分の投球ができた。いろんなボールでカウントが取れたし、勝負ができた」と評価した。広島との差を5に広げ、マジックは10。CS、日本シリーズへと描いた未来予想図へチーム一丸で突き進む。【久保賢吾】

 ◆13年10月17日、セ・リーグCSファイナル第2戦(東京ドーム)VTR

 巨人は菅野、広島は前田が先発。ルーキー菅野は、広島打線を6回1死まで無安打に抑える、ほぼ完璧な投球。打線が3回に寺内の本塁打で挙げた3点を守りきり、11奪三振で3安打完封した。菅野の完封は公式戦を含めてもプロで初めて。セ・リーグの投手がCSで完投は初だった。