<楽天6-4ロッテ>◇16日◇コボスタ宮城

 仙台の皆さん、お待たせしました!

 楽天松井裕樹投手(18)がロッテ戦で3勝目を挙げた。2回には押し出しを含めた3四球と「四球病」が再発したが、3回以降は何とか持ち直した。6回5安打3失点、4四球ながらも打線の援護をもらい本拠地初勝利。チームの連敗も2で止めた。弱気の虫を少しだけ克服したドラフト1位左腕がようやく笑顔を見せた。

 松井裕は「四球病」に悩んでいた。ブルペンでは抑えられるのに、マウンドに上がると出てしまう。この日も1回から逆球を痛打されるなど、予兆はあった。2回に爆発した。1死から、捕手嶋のミットが上下左右に動く。球が言うことを聞かない。2つの四球と内野安打で2死満塁。迎えたロッテ鈴木への、カウント3-1からの5球目は、外角高めへ大きく外れた。この回3つめの四球で、押し出すと思わず天を仰いだ。「悪いクセが出た。変化球が入らずに、苦しい投球となってしまった」と3失点で何とか切り抜けた。

 先発としての責任感が手元を狂わせていた。「心の問題なんです。四球を出したくないと思い過ぎると、ダメになる。少しでも長いイニングを投げないといけないとか、考えすぎる」。今季は中継ぎも経験。毎試合肩を作り、呼ばれれば、飛び出していく。初めて体験したブルペンの過酷さに驚いた。だからこそ、後ろの負担を軽くしないといけないと思い詰めた。無意識のうちに完投を意識し、力をセーブしてしまう。力投タイプであるのに、要領よく投げようとすればリズムが狂う。フォームも乱れ、悪循環だった。

 特効薬は助言だった。2回を終えて、ベンチに戻ると平石打撃コーチに声をかけられた。「持ち味を思い出せ」。スッと効いた。3回から荒れ球でも、迷わず腕を振った。三振か四球でいい。開き直りにも近い心境で、マウンドで力感たっぷりに跳びはねた。打線の援護も効果的だった。6点をもらい、楽になった。

 やっとつかんだ本拠地初勝利。試合後、ファンにハイタッチしながら球場を1周した。「ファンの方におめでとうと言われ、ここでもっと勝ちたいと思いました」と笑顔がはじけた。四球がダメだという首脳陣の言葉はもちろん耳に入る。だが、ファンが見たいのは躍動する松井裕樹の姿。四球病は案外、長所なのかもしれない。【島根純】