<ヤクルト0-5阪神>◇17日◇神宮

 変わらない表情、変わらないフォーム。阪神能見篤史投手(35)は攻めの気持ちを心に秘めていた。3点リードの4回。1死一、二塁で打席に畠山。1発で同点という場面。すべて直球で挑んだ。内外角を交互に使い、最後は5球目で二ゴロ併殺。ベンチへの道中で、控えめに手をたたいた。8回5安打無失点。8勝目を無四球でつかんだ。

 「今日は点差を守ることをしなかった。それがいい結果につながった。攻めるところは攻められた。併殺はラッキーもあるけどね」

 マウンドに上がると、まずロジンバッグを遠ざける。つまんで、普通の左腕とは逆のプレート右後ろに置く。投球の際に視界に入らない背後だ。そしてユニホームで微量の粉を払う。繊細な感覚は、滑り止めを必要としないのだ。連敗中はピンチになると触っていたが、この試合では、1度もさわることはなかった。

 「必要ないので、遠くに置くんです。あんまり意識はしたことないけどね」

 左足でプレートを2度はらうところまでがお決まりの動作。ローテに定着した09年以降、変わらないルーティンだ。だがこの日はいつも以上に、同じ動作が続いた。変わらない「無意識の意識」が、ここ一番の集中力を高めていた。

 最速146キロの直球を軸に、決め球フォーク、チェンジアップ、スライダーもキレは抜群だった。味方打線が追加点を奪えなくても、問題なかった。10年10月5日以来、4年ぶりの神宮白星だった。残り登板数は2試合とみられ、4年連続2桁にも、望みをつなげる1勝となった。

 「負けの方がだいぶ多いのでなかなか取り戻すことはできないけど、1試合を大事に戦っていきたい」

 試合終盤に左肩に軽い張りを訴えたこともあり、今季2度目の完封は逃した。だが、9月初勝利となった能見の復調は、クライマックスシリーズをにらんでも好材料だ。諦めるには、まだ早い。「やることは同じ」が口癖の、能見らしい投球だった。【池本泰尚】

 ▼阪神が能見-安藤のリレーで、今季の鬼門神宮で完封勝利。前日まで同球場でチームは4勝7敗、チーム防御率7.43と打ち込まれていた(他球場では3・77)。また今季の神宮での無失点試合は、5月7日ヤクルト6-0広島、8月2日ヤクルト9-0中日の2度。ビジター球団では初となった。