<楽天2-1ロッテ>◇17日◇コボスタ宮城

 初タイトルへ、視界良好だ。楽天銀次内野手(26)がロッテ戦で決勝打を放った。1-1の5回2死一、二塁で中前適時打。それまでの2打席は好機で凡退だったが、三度目の正直で決めた。7回にも安打を放ち、打率はリーグ3位の3割1分3厘6毛に上昇。首位打者を狙える位置にいる。チームは2連勝で、今季のロッテ戦勝ち越しが決定。今日も勝てば、一気に4位に浮上する。

 勝ち越し打を放っても、銀次の笑顔は控えめだった。1-1の5回2死一、二塁。初球ボールの後の2球目だった。真ん中寄りに入ったロッテ大嶺祐の直球を中前に打ち返した。一塁ベース上で、沸き上がる自軍ベンチに向かって両手を上げて応えたが、顔はちょっと口元を緩めただけ。「心からは笑えなかったですね」と正直に言った。

 理由は、それまでの2打席だった。1回は1死満塁で二ゴロ併殺。3回は2死一、三塁で空振り三振。ことごとく好機をつぶした。「2打席目も切り替えてはいたんですけどね。力んでしまいました」。ただし、いつまでも引きずらない。「終わったことはしょうがない。過去ですから。変えられない」と、三度目の正直でヒーローになった。

 活躍するために必要不可欠なメンタルを備えている。前向きで、朗らかで、明るい。中学まで過ごした三陸の大自然が、そんな資質を与えてくれたのかもしれない。ただ、その贈り物を自分の武器として生かせるようになったのは、銀次自身の成長があったからだ。「去年の経験が大きいと思います」。日本一へ駆け上がったシーズン。主力としてバットを振り続けたことで、切り替えを学んだという。だから、1回も、3回も、屈辱的な打席に終わっても下を向かず、堂々とベンチへ下がった。「凡退しても、スタンドのお客さんを見るんです。モチベーションになるから」。

 首位打者が見えている。お立ち台では「強く意識して、努力して、どうにか取りたいです」と宣言した。だが、本心は少し違う。「意識しすぎないことですね。四球狙いで見てしまったりするから。大事なのは“攻める”こと」と打ち明けた。新聞の成績表は見ない。自分の打率が、リーグ何位かも知らない。とにかく、転んでも、つまずいても、打席で攻め続ける。その先に、初の栄冠が待っていると信じて。【古川真弥】