<ヤクルト0-5阪神>◇17日◇神宮

 ヒットマンが、虎が、完全復調や。打撃不振に苦しんだ鳥谷敬内野手(33)は、もういない。先制V打を含む猛打賞だ。22打席連続無安打から脱出した途端に、3戦7安打の固め打ち。吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家)に並ぶ球団歴代4位の114度目猛打賞で、チームも2カード連続勝ち越し。2位広島に1・5ゲーム差に接近。キャプテンのバットに乗り、クライマックスシリーズ本拠開催へV字回復や。

 プレーボール直後から意気に感じた。1回、1番上本と2番大和で1死二塁の先制機を築く。鳥谷はルーキー杉浦と向き合う。カウント3-1。5球目、真ん中のフォークをとらえて痛烈なゴロで右腕の足元を襲う。鮮やかな中前適時打で、幸先よく先制点を奪った。

 「バッティングカウントになったので積極的に打ちにいきました。上本と大和がバットに当てれば点が入るんじゃないかという状況で回してくれる。(打席に)楽に入れる」

 初対決の相手が、この試合初めてフォークを投げてきた。初めて見た軌道を簡単にさばく。3回も1、2番コンビがお膳立てした1死三塁で右前へ。貫禄たっぷりの加点タイムリーだ。

 今季最大のスランプに陥っていたのがウソのようなV字回復だ。直前カードの広島戦は3日連続で試合前練習に姿を現さず、別メニュー調整。4戦連続ノーヒットの不振で、15日に神宮に乗り込んでいた。試合前練習が始まる前には、ひそかに工夫を凝らす。シューズには肉体への衝撃を和らげるインソールを入れて動いていた。硬い神宮の人工芝で、体をいたわるために細心の注意を払っていた。

 15日は、7回の第3打席で中前打を放ち、22打席連続無安打で食い止めると、一塁ベース上で思わず苦笑い。ベンチに戻ると「長かったわ…」と漏らし、胸をなでおろした。苦しみを乗り越えると、一気に息を吹き返した。この日は6回の四球を挟んで、7回に右前に運ぶ。通算114度目の猛打賞となり、吉田義男氏に並ぶ球団4位タイに浮上。強打の3番が復調し、打線で打ち勝つ、本来のパターンを取り戻した。2位広島に1・5ゲーム差だ。

 「ヒットが出たからどうこうではなく、1年間同じ感覚でやっています。いい時も悪い時もある。その分、残り試合で取り返せるようにしたい。まだ可能性がありますから。1戦1戦やっていく」

 9回1死三塁の最終打席で、冷静に四球を選ぶ。5打席すべてで出塁し、存在感を示した。「1日の最後を大事にしています」。すさまじい回復力で、1455試合連続出場、421試合連続フルイニング出場に延ばした。一瞬に命を燃やす鉄人の真骨頂だった。【酒井俊作】

 ▼阪神は明日19日にも自力2位の可能性が復活する。阪神が中日戦に○または△で、広島がDeNA戦に●が条件。仮に阪神△のとき、20日以降に阪神が残り10試合に全勝し、広島が阪神戦2試合に全敗して他の10試合に全勝すると、最終成績はともに78勝64敗2分けで5割4分9厘。この場合には阪神が広島戦に勝ち越しているため、セ・リーグ規定により阪神が広島の上位球団となる。