<楽天3-2日本ハム>◇20日◇コボスタ宮城

 指揮官の闘志が、今季初の5連勝をもたらした。楽天は2-2の9回、森山周外野手(33)が二盗、三盗で好機を広げ、最後は1死一、三塁で島内宏明外野手(24)がサヨナラ打を放った。森山の三盗の裏には、星野仙一監督(67)の“激声”があった。3位日本ハムと6・5ゲーム差。今季限りで辞任する星野監督とCSへ-。わずかな可能性を信じ、最後の巻き返しに挑む。

 大声援の中でも、声ははっきり聞こえた。2-2の9回無死一、二塁。「走れ!!」。太い声が二塁上の森山の耳に届いた。送りバントのサインを覆す主は、星野監督だった。カウント1-1。森山は「行かなきゃ怒られる」と腹をくくった。次の瞬間、スタートを切った。打席の西田も「良いスタートだ」とバットを引いた。相手バッテリーの虚を突いた。捕手市川は投げられない。二盗に続き、三盗も決めた。最後は1死一、三塁で、島内の打球が跳ねて一塁中田の頭上を越えた。

 今季初の5連勝。星野監督は、7回は代打でバントを決めた森山を「良い仕事をした」とたたえた。ヒーローは森山や島内でも、サヨナラに導いたのは指揮官の声に他ならない。三盗の場面は「行かなきゃ」と、さも当然と言い放った。

 戦後生まれ初の監督として、40歳から指揮を執ってきた。鉄拳も辞さない熱で「闘将」と呼ばれて久しいが、楽天に来たのは60歳を過ぎて。拳は使わないし、ファンから「優しい」とも言われる。それでも“声”だけは変わらない。凡ミスには怒声を響かせる。「俺は、怒鳴り声がなくなったらおしまい。ミスしてくれた方がいいのかな」。冗談めかす顔は穏やかだ。

 9月はリーグトップの12勝4敗。最大23の借金が12まで減った。森山は「(オリックスを)戦力外になって取ってくれた。下克上できたら」。明大の後輩でもある島内は「なるべく良い順位でやめてもらいたい」。3位とは6・5ゲーム差。ひょっとしたら。いや、必ずやと、選手一丸だ。【古川真弥】