<楽天10-12日本ハム>◇21日◇コボスタ宮城

 一気に首位打者へと浮上した。楽天銀次内野手(26)が日本ハム戦で4打数4安打2打点と大暴れ。オリックス糸井を抜いてリーグトップの3割2分8厘に上げた。乱打戦の末に敗れチームの連勝は5で止まり、3位日本ハムとは再び7・5差。CS進出の可能性が残る限り、岩手・普代村出身のバットマンが打線に勢いをもたらす。

 銀次はノっていた。どのコースを攻められても、抑えられる気がしない。球団史上最多2万6108人の観衆も、そう思っていた。2点ビハインドの9回1死。「塁に出れば何か起こる。必死に食らいついた」とカーターの外角高め152キロを振り抜く。鋭い打球は三塁手が捕球する直前でバウンド。イレギュラーに跳ね、左前へと抜けた。4本目の安打に、球場から「稲葉ジャンプ」に負けない歓声が起きた。

 勢いが止まらない。9月は17試合で11度のマルチ安打を記録。4安打の固め打ちは2度目だ。5糸差で首位打者を走っていたオリックス糸井をあっさり抜いた。バットコントロールの良さが群を抜く。内外角、高低も関係なく、ほとんどのコースをはじき返す。キャンプ中のティー打撃から周囲を驚かせた。50メートル先の的へ、繰り返し打球を突き刺した。的は直径約1メートルの大きさのネット。まさに妙技だった。試合後、星野監督も「銀次は他のチームも認めるほどバットコントロールが良い。よう打ってくれとる」と評価した。

 その指揮官への思いが原動力だ。2軍時代は枡田、阿部とともに「泥んこ3兄弟」として泥にまみれた。誰よりも努力し、守備に目をつむって起用し続けてもらった。レギュラー定着し、後輩へ「1軍には銭が埋まっている」と伝えることもある。努力しなければ実は結ばない。今の自分を作ってくれた星野監督に「あんなに熱い人はいない。僕もあんな熱い男になりたい」と恩を感じている。だからこそ少しでも長く一緒に野球がやりたい。CS進出へ、スイングの鋭さは自然と増した。

 3割2分8厘まで打率を上げたが、満足はしていない。「目標は3割3分以上。率を残そうとか、守りに入ったら終わり」。試合には競り負けたが、気持ちは常に高みを目指している。ぶっちぎりの首位打者をつかむため、銀次の心はたぎっている。【島根純】

 ◆銀次(ぎんじ)

 本名・赤見内銀次(あかみない・ぎんじ)。1988年(昭63)2月24日生まれ。岩手・下閉伊郡(しもへいぐん)普代村出身。盛岡中央から05年高校生ドラフト3巡目で入団し、1年目から登録名を銀次にした。09年秋に捕手から内野手へ転向。プロ5年目の10年に1軍初出場。12年に初めて規定打席に到達し、日本一の昨季は打率3割1分7厘でパ4位。174センチ、85キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸6000万円。

 ◆登録名変更選手のタイトル

 銀次のように登録名を変更した選手が首位打者を獲得した例は、94~00年イチロー(オリックス=本名・鈴木一朗)と09年鉄平(楽天=本名・土谷鉄平)の2人がいる。イチローを除き、首位打者以外の打撃タイトルではT-岡田(オリックス=本名・岡田貴弘)が10年本塁打王。

 ◆東北出身選手のタイトル

 3冠王を3度獲得した落合博満(秋田県出身)ら、岩手県を除く5県からはプロ野球のタイトルホルダーが誕生している。岩手出身選手ではヤクルト畠山が12年ゴールデングラブ賞に選ばれたが、タイトルとは無縁。