<日本ハム4-3西武>◇9月30日◇札幌ドーム

 ワンプレーでファンを魅了した。8回1死。マウンドをかすめるボテボテの打球に、日本ハム渡辺諒内野手(19)が猛然と突っ込んだ。シングルハンドでつかみ、ジャンピングスローで一塁へ。「歓声ももらって、これからの自信になります」。デビュー戦で輝くドラフト1位ルーキーを、本拠地スタンドが認めた。バットでは3打数無安打も、確かな足跡をしるした。

 ほんの少しだが、とても大きな意味を持つ、運命の交錯だった。夏の鎌ケ谷。今季、2軍で調整する時間が長かった金子誠から、貴重な言葉を授かった。「遊撃手というポジションを大切にしていった方がいい」。長く日本ハムのセンターラインを守り、遊撃手に誇りとプライドを持つ大先輩の一言が、胸に刻まれた。「誠さんが守っているショートはひと味違う。投手から信頼されている。僕もそうなりたい」。背中を追ってきた。9回は、その金子誠と二遊間を組んだ。「すごくいい経験になりました」。3時間36分のフル出場は「あっという間」だった。

 4月に右踵腓靱帯(しょうひじんたい)を断裂、8月には鼻骨骨折とけがに泣いた。イースタン・リーグでは、全日程の半分にも満たない50試合の出場にとどまった。それでも、4本塁打を放ち、非凡なセンスは見せていた。ドラフト同期の楽天松井裕、西武森らの活躍も刺激になった。「負けたくないと思ってやっていました」。ようやく、同じステージに立った。去りゆく大ベテランの劇弾に沸いた日、楽しみな新星が札幌の空で明るく光った。【本間翼】