<阪神0-1DeNA>◇9月30日◇甲子園

 無援護の長旅を終え、阪神ランディ・メッセンジャー投手(33)は息を吐いた。今季最終戦のマウンドで「ピッチ」することには成功したが、白星はついてこなかった。「ピッチ」とは、投げるだけでなく、試合をつくる投球。8回3安打1失点。黒星だけが、手元に残った。首からぶら下げたタオルで顔を拭きながら、何とか言葉を紡いだ。

 「ゲームはつくったし自分の仕事は出来たと思う。ヒットは3本だけだしね」

 10敗目への唯一の失点は5回だった。雨が降り始め、スタンドには傘が開き始めていた。先頭の下園に内野安打を許すと、バルディリスには三遊間を割られた。さらに四球で無死満塁。山口、石川は抑えたものの、2死満塁で迎えた山崎への4球目だった。カウント1-2からの内角球は押し出し死球へと変わった。

 「内角を詰まらせてゴロにしようと思ったんだけど、当たってしまった。雨は全然関係ないよ」

 ただ、失点した5回を除けば文句なしの内容。前回まで3試合では計18回で15四死球と荒れていたが、きっちり修正。中4日も難なくこなし、ローテーションを守り続けてきた男らしい投球だった。13勝で最多勝こそ微妙なラインになったが、226奪三振は2年連続タイトル間違いなし。目標の200イニングも大きくクリアしてみせた。こだわり続けた「スロー(投げる)ではなく、ピッチ(投球)する」目標を具現化してみせた。

 タフネス右腕にはCSでのフル回転が求められる。昨季やられた悔しさもある。今季の振り返りも早々に、すぐに視線を前に移した。「シーズンで達成したかった数字のいくつかは、クリアできた。でもこれに満足せずにやっていきたいと思います」。チーム最多の白星と、間隔を気にしないマウンドさばき。虎党はメッセに夢を託す。【池本泰尚】