<広島2-4阪神>◇1日◇マツダスタジアム

 阪神マット・マートン外野手(32)が猛虎打線を起こした。逆転2位へ負けられない一戦は、初回に2死一、二塁の好機となった。両リーグトップの打率を残す男が、カウント1-2から変化球を粘った。ルーキー大瀬良の8球目。高めに浮いた直球を、手元まで引き付けた。右前へはじき返したライナーが、欲しかった先制点を運んだ。4試合ぶりの打点は自画自賛の一撃だった。

 「どんな場面でも自分のバッティングをするだけだと思っていたよ。高めのボールに力負けすることなく、しっかりとコンタクトできたね」

 高ぶっていた。神戸から移動してきたこの日は、同僚ゴメスとスタジアムに一番乗り。球場入りは、フェンス越しの虎党が2人の名前をコールしながら出迎えた。試合前練習のノックでは、左翼席から男性数人のグループが応援歌を歌った。初めての光景は、この戦いの持つ大きな意味を伝えてくれた。

 9月29日は延長10回を戦い1得点、前夜は完封負けしていた。湿っていた攻撃陣が最後の大一番で目覚めた。8回にはゴメスの犠飛のあと、右前へ落としてチャンスメーク。今季56度目のマルチ安打で、打率3割3分8厘とした。広島菊池に1分5厘の差をつけ、初の首位打者を手中に。頼もしき虎の助っ人が、目指す日本一へと導いていく。