<セCSファーストステージ:阪神0-0広島>◇第2戦◇12日◇甲子園
これが虎のエースだ。2戦21イニングのゼロ封劇。真ん中に8個のゼロを並べたのはシーズン9勝に止まった能見篤史投手(35)だ。昨年は第3戦の予定で登板機会の訪れなかったCSのマウンド。好守に助けられながら、本領発揮は7回1死満塁。鈴木誠を三ゴロ、会沢はこん身の内角ストレートで見逃し三振!
ファイナルステージでも巨人を封じ込めるぞ!
能見の脳内はシンプルだった。両チーム無得点の7回。連打とバントで1死二、三塁のピンチを背負った。中西投手コーチがマウンドを訪れ、敬遠のサインが出た。小窪を歩かせ、1死満塁。ゲーム終盤の、失点が許されない場面で、大胆にも開き直った。
能見
打たれてもいいと思っていたので。半分開き直りでいきました。打たれるときは打たれるし、抑えられるときは抑えられる。
鈴木誠を三ゴロに打ち取り、2死満塁として会沢を迎えた。カウント2-2と追い込む。決めに行く場面だった。「迷わずというか、鶴さん(鶴岡)とも、お互いが一致した」。選択したのは内角への142キロ。ベストボールだった。見逃し三振。スタンドの半分を占めた赤色が頭を抱え、同時に黄色から大歓声が上がった。その中心で能見はガッツポーズを決めた。
2年越しのひのき舞台だった。昨年は第3戦にスタンバイしており、CSでの登板はなかった。何もできないまま甲子園から先に進めなかった。「僕が決めるわけじゃないけど、いくなら1戦目と思っていた」。多くを語らない男が、そう口にしたこともあった。オフからキャンプでもう1度磨いたのが、会沢を仕留めた右打者への内角直球だった。
公言してまで開幕投手を狙いにいったオフ。出身地の兵庫県豊岡市(旧出石町)にある後援会の会長、岩見俊昭さんからメッセージが届いた。「小さい町だし、子どもたちにとっても能見くんはヒーロー。結果がどうであれです。いつも元気をもらっていますよ」。笑顔になれた。多忙のためオフ恒例の講演会を行うことはできなかったが、1勝ごとにぬいぐるみなどを寄付することを決意。支えられ、つながり、背負って立ったマウンドだった。
8回5安打無失点。序盤、左足に残っている感覚だった体重を前に前に押しやって修正した。勝ちに等しい投球にも「(次は)ペナント1位のジャイアンツ。がっぷり四つとはいかない。僕たちには失うものはない」。並べたゼロを振り返ることなく、すぐに前を向いた。【池本泰尚】



