<パCSファーストステージ:オリックス1-2日本ハム>◇第3戦◇14日◇京セラドーム大阪
今季限りで引退する日本ハム稲葉篤紀内野手(42)が、値千金の一打でチームを救った。1点を追う6回1死一、三塁で代打で登場し、同点適時打を放った。引き分けでもクライマックスシリーズ(CS)敗退となる後のない一戦で、延長10回の死闘を制する劇的勝利につなげた。現役生活20年の集大成ともなる戦いに、まだ幕は下ろさない。
顔をクシャクシャにして後輩を出迎えた。稲葉が満面の笑みで中田とハイタッチした。延長10回に4番が決勝ソロ。ファイナルステージ進出が決まった。現役引退も先延ばしになった。「ああいうところで決められるのは、さすが」。ずっと目にかけてきた主砲の一打に目を細めた。痛快な逆転勝利。呼び込んだのは「代打の神様」の一打だった。
1点を追う6回1死一、三塁で出番が来た。右前へ同点適時打。第2戦に続く大仕事を果たした。打席に入る直前、近藤が詰まりながら左前打でチャンスを拡大。必死の思いを感じていた。「みんなの気持ちが入った一打」。試合前、栗山監督に呼び止められた。「早く行ってもらうかもしれない」と伝えられた。3回からストレッチを始めた。きっちり心身を勝負どころへ合わせた。栗山監督も「これくらいすごくないと。あれだけ長く野球をやれていない」と脱帽した。
5日の引退試合。ベンチ裏のロッカーでは“即席サイン会”が行われた。試合前のシートノックで野手全員が稲葉のユニホームを着用。記念の一品に主役の直筆サインをねだった後輩らが奮闘する姿に「全員いい経験をしている」。うれしそうに、ほほ笑んだ。
現役生活ラストランの舞台は福岡に移る。「ベンチで応援する時も悔いなく声を出す」。ファーストステージは代打で2打数2安打2打点。神懸かった勝負強さと献身的な姿勢でチームを支える。有終の美は、まだまだ先だ。【木下大輔】



