<セCSファイナルステージ:巨人2-4阪神>◇第3戦◇17日◇東京ドーム

 右手で帽子を少しさわり、阪神守護神呉昇桓投手(32)は代打セペダと向き合った。この日の登場は、8回2死一、二塁。1発逆転の危機だった。「オースンファン!」。10試合連続のコールが響く。5球を投じカウントは2-2。変化球も投げられる状況で、選択したのは石直球だった。力のない左飛が、マートンのグラブに収まった。窮地を救う投球。それでも表情はいつもと変わらなかった。

 呉昇桓

 みんなしんどいなかでやっている。自分のなかでは(疲れは)感じない。いつも平常心だ。

 身長178センチの呉昇桓は野球選手としては小柄だ。まして同学年のレンジャーズ秋信守、ソフトバンク李大浩ら韓国の黄金世代のなかでは一番小さい。だが、大学時代に同学年でバッテリーを組み、昨季まで韓国でプレーした宋山氏は「世代のなかでも、気は一番強い。けんかも一番強い」と言い切る。李大浩も「気持ちも力も、自分と同じくらい強い」と真顔で言った。

 拳を交えたかどうかは定かではないが、マウンド度胸を見る限り間違いではなさそうだ。9回も井端を空振り三振、長野を見逃し三振に打ち取り、最後は大和のファインプレーにも助けられ、亀井を中飛に打ち取った。1回1/3を投げ無安打無失点。シーズン中から数えて10連投を、難なくやりとげた。その間、計14回2/3を投げ3安打無失点は驚異的。さらにこれで3試合連続セーブとした。

 日に日に大きくなる声援を浴びて立ったマウンドで、やはり、すんなりと答えを出す。腕っ節の強さと、強靱(きょうじん)な精神力。松田のCS初登板を救い、ベテラン福原を休ませることにも成功した。その名を聞くだけで、味方は勝利を確信する。呉昇桓はその次元にいる。その大きな大胸筋に、虎党は夢を託した。【池本泰尚】

 ▼呉昇桓がファイナルSで3試合連続の3セーブ。プレーオフ、CSで1ステージ3セーブは、05年2S第1、第2、第5戦小林雅(ロッテ)07年2S第1、第2、第3戦岩瀬(中日)12年ファイナルS第1、第2、第3戦武田久(日本ハム)に次いで4人目で、3試合連続は3人目。1Sを含めると4セーブ目で、2ステージ合計では05年小林雅の5セーブに次ぎ、07年岩瀬(中日)と並ぶセ・リーグタイ記録となった。