<パCSファイナルステージ:ソフトバンク5-2日本ハム>◇第4戦◇18日◇ヤフオクドーム

 チームの命運は「二刀流」右腕に託された。日本ハムはソフトバンクに敗れ、通算2勝3敗(相手アドバンテージ含む)で日本シリーズ進出に王手をかけられた。後がなくなった今日19日の第5戦(ヤフオクドーム)は、大谷翔平投手(20)が、ファーストステージ初戦以来の先発マウンドに上がる。打者としてCSに4試合出場していた「強み」も生かし、崖っぷちのチームを救う。

 瀬戸際の状況も“想定内”だった。先発ローテーションの一角・メンドーサをつぎ込んで敗れた栗山監督だが、悲壮感はなかった。2勝3敗(アドバンテージ含む)と追い詰められたが、今日19日第5戦の先発は大谷。「このイメージだった。2つ勝てば第5戦でこうなる。イメージは当たっている。こういう状況で(大谷)翔平がいく。どんな投球をするか本当に楽しみ」。窮地で大谷が踏ん張り、逆転で日本シリーズへ。5戦目抜てきを決めたときに描いたシナリオに沿って、大一番を迎えることになった。

 ファイナルステージはすべて野手出場させるプランもあった。指揮官は「状況次第だった」と言う。2つ勝ち、最低でも5戦目まで進めることが、大谷登板のポイントだった。本人には、11日のファーストステージ登板後、第5戦登板の可能性は伝えていた。表向きは「急転」に映るが、綿密に、着々と準備は進めてきた。

 大谷にしかない「経験値」を生かす。ポストシーズン初登板だった11日オリックス戦は、押し出し四死球を与えるなど、乱れた。「雰囲気はかなりアウェー。心と体の不一致があった」。短期決戦独特の緊張感と敵地の威圧感に、本来の力を発揮することはできなかった。だが、今回は違う。「(ファーストSで)1回投げているので(独特の雰囲気を)気にするのもよくないかなと思う。(ファイナルSでも)打席でもチャンスをもらっていたので」。2度目の登板であるとともに、他の先発投手と決定的に違うのが、打者としてヤフオクドームの雰囲気を肌で感じていること。投打「二刀流」の最大のメリットでもある。

 17日の第3戦は「5番DH」でフル出場し、2安打を放った。野手でスタメン出場した2日後に先発マウンドに上がるのはプロ入り初めての経験。それでも本人は「気にすることじゃない」と意に介さない。

 この日は試合途中までダッグアウト裏でソフトバンク打線を研究し、敗戦を見届けることなく、ひとり球場を離れた。「ソフトバンクの打線は振れている。甘いところにいかないように。強い打者の前後をしっかりと抑えたいです」。負ければ今季が終了。それは、お世話になった先輩・稲葉の引退も意味する。極限の舞台で、怪物の力はさらに引き出される。【本間翼】

 ◆大谷投手の対ソフトバンク成績

 今季レギュラーシーズンでは4試合すべて先発で1勝2敗、防御率3・52。ヤフオクドームに限れば3試合1勝1敗で、8月26日は7回1失点で今季10勝目をマークしている。通算では登板9試合(先発8試合)で2勝2敗、防御率3・75。選手別では李大浩、松田、長谷川に被打率が高く、内川は1割台に抑えている。