<セCSファイナルステージ:巨人4-8阪神>◇第4戦◇18日◇東京ドーム

 阪神が巨人に4連勝し、9年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。

 歓喜の輪で背番号7がひときわ輝いていた。西岡剛内野手(30)は、真っ先にマウンドに達すると、満面の笑みで外野から戻る戦友を手招きする。この瞬間を待っていた。誰よりも苦しい1年を過ごした男に大きなご褒美が待っていた。

 「ケガをして1年間、シーズンを戦っていない。チームとして集大成の試合で1番に起用されて期待に応えたかった」

 勝利への流れを加速させる一撃だった。1回に4点を先制した理想の流れに乗じる。2回1死二塁。球が上ずり、浮足立つ小山とは格が違う。カウントは3ボール。ベンチを見ると、和田豊監督(52)と目があった。「行け!」の雰囲気を感じ取った。覚悟を決めた。狙いも定めた。「低めを捨てて、高めを狙ってました」。読みも的中。高めのボールゾーンに向かう直球を強振する。完璧に振り抜いた弾道は右翼席に刺さった。今季初アーチの2ランで、リードを一気に6点に広げた。

 3月30日、巨人戦で守備中に福留と交錯して後頭部を強打。救急搬送され、選手生命すら危ぶまれる重傷にあった。試練の日々を過ごしても、野球への情熱を燃やし続けた。2軍戦に出場していたとき、若手選手をこう諭した。「ベンチにいても、ただ相手投手をヤジるだけじゃアカン。クセを見つけようと心掛けろ。ずっと見ていれば、何か見つかる」。1軍の晴れ舞台から遠く離れていた。どんな苦境に立っていても勝つ執念を捨てたことはない。

 この日もそうだ。5回に中前打を放ち、8回は左前に運んで猛打賞。三塁守備でも、6回に長野のライナーをダイビングキャッチした。「チームは違うけど4点差をひっくり返されたこともある」。気を緩めず、攻守で奮闘した。

 ロッテ時代の10年には3位からCSを突破し、日本一に上り詰めた。「ロッテだったら(CS突破で)ビールかけをするけど、阪神はしない。シーズン1位を目指して優勝しないと」。美酒は日本シリーズを制して味わえばいい。「このシリーズで必要とされて、2014年のシーズンに僕が参加していた足跡を残したい。最後に、阪神に残したいものが僕個人としてある」。希代の勝負師は全力で頂点を狙う。【酒井俊作】

 ▼西岡の猛打賞はロッテ時代3度、今年1S第2戦に次いでCS通算5度目。プレーオフ、CSで猛打賞5度は田中賢(日本ハム)小笠原(日本ハム、巨人)和田(西武、中日)の各4度を上回る新記録。

 ▼1回にマートン、福留が連続本塁打し、2回に西岡も本塁打。阪神のポストシーズン試合での1試合3本塁打は最多タイ。85年日本シリーズ第6戦西武戦(西武)の長崎、真弓、掛布以来、29年ぶり2度目。阪神のポストシーズンでの1イニング2本塁打は、64年日本シリーズ第5戦南海戦2回の辻佳、安藤以来50年ぶり2度目。2者連続は球団初となった。