<パCSファイナルステージ:ソフトバンク4-6日本ハム>◇第5戦◇19日◇ヤフオクドーム

 4番の起死回生の1発で逆王手だ。日本ハムが4点差をひっくり返す大逆転勝利で対戦成績を3勝3敗(アドバンテージ含む)のタイとした。先発の大谷が2回に4点を失ったが、打線が奮起。7回に3点を返し、8回は中田翔内野手(25)のCS5発目となるソロ本塁打で追いついた。これで勢いづき、延長11回に中島の決勝2点適時打で勝ち越した。下克上での2年ぶり日本シリーズ進出へ、最高潮のムードで今日20日の最終戦に臨む。

 4番が、夢をつないだ。中田は打った瞬間、祈った。「切れるな」。1点を追う8回。打球は左翼ポール際。手応えは十分。願いは通じた。今CS5発目となる同点ソロ。「何とか次につなごうという気持ちだった」。先発の大谷は両手を上げてガッツポーズ。チームメートも三塁側ベンチを飛び出して喜んだ。負けるか引き分ければ敗退となる一戦。勝負強すぎる主砲が、チームを生き返らせた。

 伏線は7回だ。2点差として西川が右翼へ同点2ラン…かと思われたが、ビデオ判定の結果は三塁打。西川は「僕はホームランバッターじゃないので」と悔しさを隠したが、主砲の心には火が付いた。「あれで締まった部分もあった。刺激になった」。ほんの少し足りなかったパワーを4番らしく補った。大逆転での逆王手を呼び込んだ。

 打線の粘りは驚異的だ。CSに入り、逆転勝利は4度目。いずれも“勝利の方程式”を打ち崩している。オリックスとの第3戦は中田が平野から決勝ソロ。この日もセットアッパー五十嵐を打った。米大リーグから昨季、日本球界に復帰した右腕の被弾は2年間でわずか1本。それが13年4月7日に札幌ドームで中田が放った3ランだった。4番が再び沈めた。

 守護神サファテもKOした。延長11回。2死満塁から伏兵の中島が右前へ決勝適時打。前日18日の第4戦は2度の満塁機で凡退し、地元・福岡出身の九州男児は雪辱に燃えていた。「あそこで打たないと男じゃない」。直球一本に絞り、気合で149キロをとらえた。「みんなの力で勝った試合」と胸を張った。最終戦を前に相手投手陣に与えたダメージは計り知れない。

 最後は何が何でも勝つ。負ければ終わりの重圧の中、総力戦での勝利に栗山監督は「環境が才能を引き出してくれるというものがある。だから明日も試合がしたかった」と、熱きタクトを最後まで振るつもりだ。いよいよ天王山。中田も不敵に笑った。「若い選手が、いいところで本当によく打ってくれた。今日みたいな勝ち方は勢いづく。楽しみだね」。さあ第6戦。日本ハムが、大どんでん返しの歓喜を味わう。【木下大輔】

 ▼中田がCSファーストSから5本目の本塁打。ファイナルSでの4本は過去6人がマークした同一ステージ最多の3本を上回る新記録。プレーオフ、CSのシーズン5本は08年ウッズ(中日)の最多記録に並んだ。打った相手の五十嵐は昨年4月7日に札幌ドームで同じ中田に1発を許して以来、シーズンをまたいで公式戦、CS通算110イニング連続被本塁打ゼロを続けていただけに価値ある1発となった。

 ◆下克上進出

 CSで公式戦2位以下が日本シリーズに進出したのは07年中日(2位)10年ロッテ(3位)と今年の阪神(2位)だけ。2位以下同士の対戦になれば史上初。ちなみに今季大リーグのワールドシリーズはロイヤルズ(地区2位)とジャイアンツ(地区2位)の史上2度目となるワイルドカード同士の決戦だ。