<パCSファイナルステージ:ソフトバンク4-1日本ハム>◇第6戦◇20日◇ヤフオクドーム

 日本ハム稲葉篤紀内野手(42)の現役生活が幕を閉じた。勝てば現役続行、負ければ引退の最終第6戦は9回に代打で登場。ソフトバンク守護神サファテの3球目をフルスイングしたが、捕邪飛に終わった。試合後は両チームの選手の胴上げで見送られた。引退表明後も主に代打で活躍し、CSの快進撃に貢献。大きな足跡を残し、バットを置いた。

 感極まった。稲葉が20年間の現役生活に幕を閉じた。9回、稲葉ジャンプのメロディーを聴きながら先頭で代打。カウント1-1からの3球目。151キロ直球を打つも力のないフライが、頭上に上がった。捕邪飛。「目いっぱい振りました。悔いはない」。少し笑みをこぼし、三塁側ベンチへゆっくりと引き揚げた。バットに向かって「ありがとうございます」。熱い思いが、こみ上げた。

 試合終了は見届けることが出来なかった。「こらえきれなかった」とベンチ裏へ。気持ちを整理し、グラウンドへ飛び出るとサプライズに涙腺は崩壊した。左翼席の日本ハム・ファンへあいさつを終えると、ソフトバンクの選手が駆けよってきた。5度の胴上げ。長年、愛用した登場曲、QUEENの「I

 Was

 Born

 To

 Love

 You」も流れた。敵地の粋な計らい。「一緒に戦ってきた仲間に胴上げしてもらうのは幸せなこと」。涙は止まらなかった。

 長く、しぶといラストランだった。9月2日に今季限りでの現役引退を発表した。後輩は悲しんだ。「稲葉さんと1日でも長く…」と、みんなが思いを共有した。「オレが出たらダメ」と若手に奮起を促していたCSは代打で6打数3安打2打点。最後まで存在感は抜群だった。「すべて終わったなぁ」。タオルでぬれた瞳を拭きながら、感慨にふけった。後輩へ「自分たちのチームをつくっていけばいい」。光る目は、新たな未来を見据えた。【木下大輔】