<SMBC日本シリーズ:阪神6-2ソフトバンク>◇第1戦◇25日◇甲子園

 頼れる4番が、また打った!

 甲子園で始まった「SMBC日本シリーズ2014」の初戦、阪神マウロ・ゴメス内野手(30)が2安打3打点の活躍を見せた。4回に先制二塁打を放つと、5回2死満塁からは左前打で2点を加えた。ゴメスはクライマックスシリーズ(CS)から通じ7試合で11打点の荒稼ぎ。チームは引き分けを挟んで6連勝と、29年ぶりの日本一へ向けて勢いは加速するばかりだ。

 神懸かり的な勝負強さは、頂上決戦でも衰えていなかった。1点リードの5回。2死後に満塁機が巡る。スタンリッジとの対決に冷静だった。初球スライダーを見送りストライク。2球目は直球が外れる。その直後、外角低めスライダーをとらえて三遊間を破った。

 「球種は意識していないんだ。何度も言うけど、ストライクゾーンに来る、打てる球が来れば、打っていくだけだよ。腕が伸びて、ああいう形になった。自分の仕事とは走者をかえすことさ。それを、しっかりと果たすことができたね」

 この日、スタンリッジはスライダー系の切れが抜群だった。一方で速球系は微妙に制球が狂い、変化球中心の配球になっていた。その傾向を見逃さない。カウント1-1から攻略した球は完璧な1球だろう。自信満々に投げてきた球をとらえる。スタンリッジの闘争心すら打ち砕く一撃だった。2者が生還するタイムリーで3点差に。直後にマートンが傷心の元同僚から2点打で勝負を決めた。

 CSは6戦でリーグ最多記録の8打点。今季のリーグ打点王は日本シリーズでもポイントゲッターの真価を発揮した。まさに助っ人の独壇場だった。勝利への扉を開けたのも主砲だ。4回1死二塁。初球の高めツーシームを引っ張り、ライナーで左翼線へ。先制適時打でナインを鼓舞した。

 順風満帆のシーズンに映るが、実は違う。2月中旬の来日直後には最大の試練を味わっていた。夫人の出産でキャンプインに遅れ、調整不足を露呈した。体調不良、右足張りで何度も離脱…。笑顔は消えて、ふさぎ込んだ。必死でフォローしたのが球団首脳だ。「4番でとった期待は変わらない。ケガでも焦らず、シーズンに向けて調整すればいい」。単身の心細さもあった。別の関係者は「もうすぐ弟が来るだろう。我慢だよ」。実力を不安視する周囲の雑音に耳を貸さず、開幕に間に合わせた。多くの仲間に支えられて1年目をラストスパートしている。

 日本シリーズの初戦で3打点を刻み、栄光の軌跡をたどる。日本一に輝いた85年も第1戦でバースが3ランを放って3打点。史上最強助っ人に肩を並べる働きぶりだ。29年ぶりの頂点奪取に向けて和田阪神が力強く発進した。【酒井俊作】

 ▼ゴメスが先制打を含む3打点。阪神でV打を放った外国人選手は62年第2戦ソロムコ、85年第1戦、第2戦バースに次いで3人、4度目。1試合3打点は85年第1戦、第3戦バースに並び、チームの外国人選手では最多タイとなった。ゴメスは得点圏打率が公式戦3割2分1厘、CS4割5分5厘と勝負強く、公式戦の109打点、CSの8打点がともにリーグトップ。過去に公式戦とシリーズのダブル打点王は00年松井(巨人)まで9人(11度=阪神では85年バース)いるが、ゴメスは公式戦、CS、シリーズのトリプル打点王を狙う。