<SMBC日本シリーズ:阪神6-2ソフトバンク>◇第1戦◇25日◇甲子園

 阪神福留孝介外野手(37)がダメ押しの一打を放った。5回、ゴメス、マートンの適時打で5-0とリードした後、なお、2死二塁で相手は左腕森福を送ってきた。初対戦の相手にスライダー空振り2つで追い込まれた。だが、ここからファウルで4球粘った。9球目。シュートをとらえると、ライナーで左中間を破った。

 「パピー(ゴメス)とマートンの流れで打たせてもらった。(森福のイメージは)まったくわからなかった。球筋が見られてよかった。これからもやることを考えれば、打ててよかった」

 CSではチーム最多2本塁打を放ち、シリーズ進出の“陰の立役者”となった。自身3度目の大舞台でも勝負強さは健在だった。第2戦以降を考えても、相手の左キラーを打ったことには大きな意味があった。

 どんな時も平常心を貫ける。この日、グラウンドに入る前、緊張感について問われると笑い飛ばした。

 「(普段と)何が変わるの?

 変わると言えば、みんな(報道陣)がネクタイしているくらいでしょ」

 6年前、初めて米大リーグに挑戦した時も自然体だった。カブス本拠地での開幕戦の朝、縁起を担ぐこともなく、ホテルで出されたサンドイッチとスクランブルエッグを食べて出陣した。「俺は変わらないよ」。そして、起死回生の3ランデビューを飾った。

 「これだけのお客さんの中で大歓声を受けてプレーできる。これだけ黄色になると、すごかったね」

 中日時代、2度出場したシリーズではいずれも敗れた。この舞台で笑った記憶はない。だが、勝負に臨むスタイルはいつも同じ。余計なものも背負わない。勝利の先にある歓喜へ、自分のスイングを貫くだけだ。【鈴木忠平】

 ▼福留が5回にダメ押しタイムリー二塁打。CSと合わせ、今季ポストシーズン7試合で打率3割3分3厘(24打数8安打)と好調だ。中日在籍中チームは99、04、06、07年と日本シリーズに4度進出したが、福留は故障で04、07年を欠場。99、06年には出場したものの、通算打率1割5分8厘(38打数6安打)。阪神に移籍した昨季のCSファーストステージ広島戦も4打数無安打だった。