<SMBC日本シリーズ2014:ソフトバンク5-1阪神>◇第3戦◇28日◇ヤフオクドーム

 また、また、また好投した。ソフトバンク大隣憲司投手(29)がシリーズ初登板。7回3安打無失点と三塁を踏ませない快投で勝利投手となった。レギュラーシーズン最終戦、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第6戦に続く力投で、対戦成績を2勝1敗とした。この勢いなら本拠地での胴上げも見えてきた。

 神様、仏様、トナリ様-。大隣がまたも重要な試合で白星を運んできた。内外角を存分に使った投球で6回までわずか1安打。7回に2安打も、2回以外は二塁を踏ませなかった。「阪神打線はスキがなかった。外一辺倒で抑えられる打線ではない。突っ込むところは突っ込んで、ボールにするところはボールに、と。思うような投球ができた。今は、ここが重要な回だなとか、広い視野で状況を見られている」と気持ちよさそうに汗を拭った。

 白星がつくように白いパーカ、白いスニーカーで球場入り。中4日だったCSファイナルステージ第6戦から中7日。ただ「変わらない。ここまで来たら気持ち1本」と魂を込めた。藤浪とは対照的に、制球と投球術でゼロを並べた。最も警戒したゴメスは内角を突きながら、2回は低め直球で三ゴロ。4回2死は外角チェンジアップで空振り三振に仕留めた。

 昨年に国指定の難病である黄色靱帯(じんたい)骨化症を発症。今年7月に復帰登板した。その後、ある中学生から「励まされています」という内容の手紙が届いた。そのファンも闘病中だった。「いろんな人を勇気づけられるようなピッチングをしたい」と語る大隣は喜び、自分だけでなくチームメートのサインを寄せ書きにして届けた。

 リーグ優勝が決まると、近大時代の恩師である榎本保前監督に電話で報告した。周囲に弱音を吐かない大隣が、そっと打ち明けた。「復帰まで本当に長かった。でもあの長さがあったから、今の僕があるんです」。人生で最も緊張したという昨年6月の手術。つらかったリハビリ。困難を克服したことで、左腕は、より成長して帰ってきた。

 手術では、男性の親指大の黄色靱帯を切除した。だが今も、体内には、別の黄色靱帯が残っている。再発の可能性はゼロではない。榎本前監督は「お互い、病気がぶり返すことは考えないようにしような。よくなることだけ考えような、と話しました」。主力として戻った今、振り返ることはない。前進あるのみだ。

 第7戦までもつれれば、中4日で先発の可能性があり、101球でお役御免となった。シリーズ初登板は「楽しかった」と、笑顔で終えた。お立ち台ではスタンドを見渡した。「戻ってきたときから温かい声援で、皆さんに感謝をする、その気持ちだけで投げてきました。日本一に向けて精いっぱい頑張っていきたい」。顔には、安堵(あんど)感が広がった。【大池和幸】<大隣の節目登板VTR>

 ▼10月2日オリックス戦

 レギュラーシーズン最終戦で先発し6回4安打無失点。2度得点圏で4番ぺーニャと対戦し、連続三振に仕留めるなど走者を背負った場面で粘った。勝利投手にはなれなかったが、チームのサヨナラ勝利へ流れをつくった。

 ▼10月20日CSファイナルステージ日本ハム戦

 アドバンテージ1勝を含め3勝3敗で迎えた第6戦。7回6安打無失点。経験のない中4日の先発登板だったが勝ち投手に。秋山監督からお立ち台に呼ばれた。

 ◆黄色靱帯(じんたい)骨化症

 脊髄が走る「脊柱管」の後ろ側にある骨を結びつけている黄色靱帯が硬くなり、通常の何倍もの厚さになって脊髄を圧迫する国指定の難病。背骨のうち「胸椎」の部分で起こることが多い。野球の投球で左右不均衡に体を曲げることの多い投手に多いとされる。