【グアム(米国)21日=久保賢吾】今年も、巨人のブルペンを鉄腕が守る。左肘の状態が心配される山口鉄也投手(31)が、開幕戦でのブルペン入りに自信をみせた。左肘痛に苦しんだ昨季は、7年連続60試合以上登板の「勤続疲労」を指摘する声も上がったが、真っ向から否定。昨年10月、「PRP療法」と呼ばれる治療を受けた左肘の回復は順調そのもので、8年連続60試合登板に照準を定めた。

 練習後の火照った体。その熱のままに、普段はクールな山口がホテルの自室で、今年にかける意気込みを熱く語った。昨年は優勝が決まった試合で節目の7年連続60試合登板を達成。左肘痛と闘いながら、到達した記録だった。周囲からは鉄腕の勤続疲労も指摘されるが、首を振った上で開幕を強く意識した。

 山口

 シーズンを戦えば、疲労はみんな同じ。理由にはなりません。原因ですか?

 年なのかな?

 というくらい。今できるのは、同じことを繰り返さないように、開幕から1年間戦える準備をするだけ。

 左肘痛の真相は何だったのか。腕組みをしながら、ジッと考え込んだ。テーブルに置かれたアイスコーヒーの氷が溶け、「カランッ」と音が響いた。「オールスター明け頃でしょうか。何かいつもと違うな、という感覚があって。でも、投げられたし、リーグ3連覇に何とか貢献したいと。(違う感覚が)ずっとあったけど、投げ続けること以外、考えはなかった」。

 昨年10月末に、「PRP療法」と呼ばれる治療を受けた。血小板を集めて患部に注入し、損傷部分の回復を促す再生医療の1つで、山口の場合は右肘から血液を集め、左肘に注射した。慎重にリハビリを進め、グアム自主トレ最終日のこの日、初めてブルペンで25球の立ち投げを行った。「本当に順調だし、状態はいいです」と不安を吹き飛ばした。

 昨年、再認識したのは「60」の重みだった。「数字は意識してない」が口癖だったが、首脳陣の配慮や仲間の励ましによって届いた大台は特別に感じた。「やっぱり、自分の中では大きな数字だなと。去年は迷惑をかけたけど、また挑戦できる。励みになるし、幸せなこと。だから、今年は悠々と超えたい」と言った。「正直、不安はある。でも、もっともっと投げ続けたいです」。巨人のブルペンを支える山口は、不死身だった。【久保賢吾】

 ◆PRP療法

 PRPとはプレートレット・リッチ・プラズマ(platelet-rich

 plasma)の頭文字で、多血小板血漿(けっしょう)という血小板を多量に含有する血漿(けっしょう=血液の液状成分)。成長因子や接着因子などを含むため、損傷組織の修復を促す目的で患部に注射する治療法。歯科や美容外科では普及が進んでいる。昨夏は田中将大(ヤンキース)が、右肘靱帯の部分断裂治療に用いた。

 ◆巨人のブルペン

 西村が先発に回り、マシソン-山口-西村の最強中継ぎユニット「スコット鉄太朗」は解散となった。代わって沢村がブルペンに加入。マシソンと抑えの座を争う。2人は右のパワーピッチャーだけに、やはり山口の存在は欠かせない。キャンプ1軍スタートとなったドラフト2位の戸根千明投手(22=日大)、同3位の高木勇人投手(25=三菱重工名古屋)が、層の厚い陣容に食い込めるか注目。