脳裏にはあの球団史上最高のシーズンがよみがえっていたのかもしれない。1月31日、阪神和田豊監督(52)はキャンプインより1日早く、ユニホームに袖を通した。80周年を記念して一新された今季のユニホームは日本一となった85年のデザインと同じ白地に黒のタテジマだった。

 「個人的には30年前、入団した時の85年のユニホームですので、初心に帰るというか。伝統を感じる、このユニホームで新たな歴史をつくっていきたい」

 ドラフト3位で入団した新人和田は85年7月にデビュー。バース、掛布、岡田、真弓らそうそうたる顔ぶれの中で1軍入りを果たした。7月18日、前半戦最後の広島戦。4連敗して3位転落の危機で迎えた試合で、右足負傷の岡田に代わって出場して5打数4安打。連敗ストップに貢献し、後に当時の吉田監督が「あの試合が大きかった」と逆転優勝の分岐点となった試合だと振り返った。球団唯一の日本一にしっかりと足跡を残した。

 あれから30年の月日が流れ、就任4年目に球団創設80周年を迎えた。そのメモリアルシーズンであれ以来の日本一を狙う。不思議な巡り合わせを感じていたのかもしれない。ユニホームに身を包んだ指揮官はうれしそうだった。

 全体ミーティングでは勝利への執念、さらなる向上心、一致団結と3つのキーワードを強調した。

 「きょうの思いが野球人としての初心。これをいかに1年間、持ち続けられるか。ほぼ同じメンバーで戦うわけだから個々のレベルアップが大事になる」

 あの最高の瞬間を再現すべく、和田阪神4年目が動きだした。【鈴木忠平】