昔の自分を取り戻せ!

 楽天のドラフト1位安楽智大投手(18=済美)が14日、沖縄・久米島で2軍キャンプに合流し、初練習を行った。酒井勉2軍監督(51)は当面の育成プランとして「プロ野球選手見習い」と位置付け。ブルペン入りをさせずに、基礎体力から向上させる方針を明かした。また投球フォームに関しても、高校2年時の投げ方に戻したいと明言。早期の1軍昇格を急がせず、じっくり育成する。

 1軍が去り、観客も報道陣もまばらな久米島球場で、安楽はガックリと肩を落としていた。「ブルペンに入れないんです…」。2軍での練習初日に待ち受けていたのは「ブルペンお預け」だった。ドラフト2位の小野郁投手(18=西日本短大付)ら若手が投げ込みを行う中、黙々と体幹トレーニング。酒井2軍監督は「新人王と宣言していたけども、プロ野球はそんなに簡単じゃない。まずは『プロ野球選手見習い』という気持ちでやってもらいましょう」と不敵に笑った。

 期待値が高いからこそ、突き放した。酒井2軍監督は9日に1軍キャンプを視察。ブルペンでの投球を見て全投手陣でワースト3に入る球質だったと言い切った。理由について「高校時代、3月から11月まで毎週土日の練習試合で完投していたら、年間約600イニングは投げている。プロではあり得ない数字でしょ?

 その疲労がある」と分析した。まずは肩と肘を休ませながら、基礎体力づくりを最優先させると話した。

 もう1つ、気になる点があった。フォームだ。高校の頃の豪快さが消えてしまっていると嘆いた。左手のグラブを砲丸投げの選手のように高々と突き上げ、背中の後ろから見えるほど反らせる右腕。それらが小さくまとまっていた。安楽が独学で変更した投げ方を「今のフォームは弓をちょこんと引っ張って投げている感じ。力が伝わっていない」と悲しげに話した。

 157キロの球を取り戻させるため、心を鬼にしている。すでに高校2年時の映像を見させ、「安楽らしさ」とは何かを考えさせた。昨年松井裕が2軍落ちした際も同様の指導で復活した。「もし(157キロの)あのボールならそのままプロで通用した。あの球を取り戻したい。球団の柱にさせるには、段階を踏ませないと」と力説した。全ては安楽のため。ブルペンも、実戦も、早期1軍昇格も棚上げにして、見習いから再出発させる。【島根純】