<東都大学野球:駒大4-2中大>◇第1週初日◇5日◇神宮

 昨年、興南(沖縄)でエースとして春夏甲子園を制した中大・島袋洋奨(ようすけ)投手(1年)は、無念の黒星デビューとなった。同大学では48年ぶりの1年生開幕投手を務めたが、駒大相手に4回2/3を5安打4失点(自責1)。味方のミスもあったが、高校とのレベルの違いを知らされた。

 甲子園を席巻したトルネード左腕の新章は、ほろ苦いスタートとなった。先発を言い渡されたのは試合の2日前。「楽しみな1日ではあったけど、悔しい1日で終わりました」。96球を投じた、大学の聖地の初マウンドを表情を変えることなく振り返った。

 チームでは高橋善正監督(66)以来、48年ぶりとなる新人開幕投手に「緊張も少しあった」と、わずかな重圧を感じていたという。それでも1回に自己最速にあと1キロに迫る146キロを2球計測。「真っすぐが思うようにいっていない」と言いつつ、3回までに4三振を奪った。

 リーグ戦という本気の勝負で打者と対峙(たいじ)し、「高校生と違う。空振りを取りたいところで取れなかった」と違和感があった。34球投じた1回は13球ファウルされた。自慢の直球でも簡単に空振りしない。甲子園通算13試合で130三振を奪った左腕は、大学レベルを肌で感じた。

 ただ、4失点のうち2点は失策絡み。1点も降板直後の2番手投手が打たれたものだ。不運にも「ゲームをつくるのが先発の仕事」と言い訳はない。そんな島袋に、駒大・小椋正博監督(57)は戦々恐々とした。「ピッチングがうまい。モーションの中で緩急を使う。球、気持ちと、3つで(打者は)タイミングをずらされる。ビックリした」。

 ルーキーを大胆に起用した高橋監督の評価も変わらない。「やっぱり18歳、1年生か」と切り出しながらも「ちゃんと投げれば大丈夫」と2、3回に3者凡退に抑えた点を収穫に挙げた。「次に目指すものができた」と言うトルネード左腕が、「戦国東都」を吹き抜ける日は近い。【清水智彦】