<東京6大学野球:早大11-2立大>◇第3週初日◇28日◇神宮

 早大が緊急事態を乗り越え、立大に大勝した。試合前のシートノックで、今秋ドラフト候補の4番杉山翔大内野手(4年=東総工)が捕手と接触。脳振とうを起こして救急車で病院へ向かった。主砲を欠いたチームは結束し、16安打で11得点と打線が爆発した。

 試合直前の早大ベンチに衝撃が走った。捕手への飛球で終わるはずのシートノック。一塁手の杉山は「太陽が目に入った」と捕手地引と激突。脳振とうを起こした。「気がついたらベンチ裏で寝ていた」。救急車で慶応病院に搬送され、4番一塁で発表されていたスタメンから外れた。激突直前からの記憶を失い、あごを6針縫う裂傷を負った。

 緊急事態に岡村猛監督(57)から「こういう時こそ結束しよう。全員で杉山の分をカバーしよう」とゲキが飛んだ。先発の高梨雄平投手(2年=川越東)は「4番なので正直まずいなと思った。いるのといないのでは大違い。監督の言葉で気合が入った」と発奮した。2回、先頭からの3連打で無死満塁。高校時代は4番で通算11本塁打の高梨が、左翼越えの走者一掃となる先制3点二塁打を放った。チームきっての飛距離を誇る杉山を欠いたが、単打14本を積み重ねて大量11得点。ドラフト候補の相手先発小室を2回KOした。

 マネジャーから試合経過を逐一知らされていた杉山は9回に病院から戻り、ベンチ裏から声援を送った。「自分としてはみんなを信じるしかなく、みんなが打って悔しいというより、勝ってくれてありがたい」と感謝した。「短期間にもう1回やると命にかかわると医者に言われた」ため今カードは欠場濃厚となったが、09年秋以来5季ぶりの開幕3連勝。主砲は試合に出なくとも、存在感でワセダを支えた。【斎藤直樹】