<明治神宮大会:富士大3-0国際武道大>◇11日◇大学の部準々決勝◇神宮

 富士大(東北3連盟)の多和田真三郎投手(1年=中部商)が、大会では21年ぶり4人目のノーヒットノーランを達成した。国際武道大(関東5連盟)を相手に許した走者は2四死球のみ。最速146キロの直球がさえ、9三振を奪って打者27人で片付けた。

 多和田は快挙にも落ち着いていた。ノーヒットノーランを期待する歓声が上がる中、直球を5球続けた。最後は144キロの外角球で空振り三振。「勝つ気でいたので、喜びよりも次もやってやろうという気持ちだった」と、帽子のつばを触って淡々とマウンドを下りた。試合後、報道陣から大会21年ぶりの記録と聞くと「あらためてすごいと思う。驚いてます。中学、高校でできなかったのでうれしい」と表情を緩めた。

 回転数の多い直球が走った。球速は自己最速タイの146キロをマーク。2回に死球、3回に四球を与えたが、「ウイニングショットの真っすぐが良くなった。前半はシュートしていたけど、後半はいいところにいった」。6回の攻撃中に左翼手の久保に「狙おうぜ」と言われて記録に気が付いた。7回には右翼へ大飛球を打たれたが、好捕に感謝した。

 失意からはい上がった。沖縄の中部商では2年夏に糸満・宮国(現巨人)と投げ合い、3年夏は沖縄大会決勝に進むなどプロから注目された。しかし、プロ志望届を提出もドラフトでは指名漏れ。「悔しかったけど、大学で成長してドラフト1位になる」と決意した。沖縄からは遠いが、進路の決定をドラフト後まで待ってくれ、高校の先輩も在籍する岩手・花巻の富士大への進学を決めた。

 春は「東北の寒さに慣れさせる」(青木監督)と、あえて主戦として起用されなかった。1週間で600球を投げ込むなど、1度も沖縄に帰省せず練習に打ち込んだ。最速を4キロ伸ばし、シンカーを覚えると、秋は背番号18のエースに成長。自身初の全国出場を決め、大舞台で輝いた。

 準決勝は、法大-三重中京大の勝者と対戦する。法大は最速155キロ右腕の三嶋を擁し、三重中京大には154キロ右腕の則本がいる。どちらが来ても好投手対決になるが「優勝を目標にやっている。1戦1戦を大事にしたい」と意気込んだ。【斎藤直樹】

 ◆多和田真三郎(たわた・しんさぶろう)1993年(平5)4月13日、沖縄県中城村生まれ。小1から津覇少年野球クラブで野球を始め、小4から投手。中城中では軟式の部活。中部商では1年秋にベンチ入り。181センチ、72キロ。右投げ右打ち。家族は父真次さん、母もと子さん、長兄真一郎さん、次兄真太郎さん。