<東都大学野球:亜大2-1国学院大>◇最終週最終日◇29日◇神宮

 亜大が、6季連続優勝で「戦国東都」に新たな歴史を刻んだ。先発のドラフト1位候補、エース山崎康晃投手(4年=帝京)が延長10回11奪三振で1失点完投。10回に長曽我部竜也内野手(4年=新田)が決勝の中前打。勝利したチームが優勝の大一番で、国学院大に競り勝った。山崎はMVPと最優秀投手賞の2冠を獲得。6季連続優勝は39年春から専大が達成しているが、同年秋に3校同時優勝を挟むため、単独校では史上初の快挙となった。

 1点リードの土壇場、延長10回2死一、三塁。歴史的優勝目前になって、エース山崎が顔をゆがめた。三塁側ベンチに下がって治療を行う。臀部(でんぶ)付近から右足にかけて、けいれんが止まらない。初夏の厳しい日差しの中、中1日で投げた137球目で、体が悲鳴を上げた。

 1度下がったベンチには、背番号「17」のユニホームが飾られていた。今季2試合に先発した花城直投手(3年=八重山)が、楽天星野監督と同じ国指定の難病「黄色靱帯(じんたい)骨化症」を患った。16日に手術を受け、今は札幌市内の病院に入院中。全選手でビデオレター、千羽鶴、手紙を送った。私生活から弟のようにかわいがっていた山崎は「ウイニングボールを花城に、との思いだった」と奮い立った。

 生田勉監督(47)の問い掛けに、震える足で続投を直訴。再び上がったマウンドで、三塁ゴロに打ち取り、歓喜の中心に立った。試合後のベンチ裏には、仕事を成し遂げた男の嗚咽(おえつ)が響き渡った。

 九里(広島)-嶺井(DeNA)のバッテリーが抜け、順風満帆ではない戦い。7回に同点ソロを放った池知佑也外野手(4年=高知)は国学院大1回戦はベンチ外。前日に代打で決勝打を放った渡将太捕手(4年=福岡第一)に続き、腐らずに練習する控え4年生に日替わりヒーローが生まれた。逆転勝利は7試合。生田監督は「グラウンドには神様がいる」とかみしめた。

 今も昔も「全力疾走」がモットーで、練習中から全選手が全力で走り続ける。試合前日にはグラウンドで「第一学生歌」を合唱。変わりゆく時代に、変わらない亜大の野球が、歴史を塗り替えた。【前田祐輔】

 ◆東都大学リーグの優勝連勝記録

 戦前に、専大が39年春から41年の秋に6季連続で連勝している。戦後では、昨季までの亜大と、東洋大が07年春から09年春に達成した5季連続が最高だった。4季連続はなく、3季連続も亜大の02年春から03年春など4校だけ。