<プロ野球ドラフト会議>◇23日

 楽天が大胆不敵な戦略で、超高校級投手の交渉権を手に入れた。「プロ野球ドラフト会議

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 リポビタンD」が、東京都内で開かれ、楽天がドラフト1位で済美・安楽智大投手(3年)を指名。ヤクルトとの競合となったが、立花陽三球団社長(43)が3年連続でクジを引き当てる強運を見せた。前日22日のスカウト会議後、早大・有原と智弁学園・岡本の二者択一を明言していたが、最終的に安楽にシフト。昨年1位の松井裕に続き、将来のエース候補をゲットした。

 小さく握った右拳に「してやったり」の気持ちを込めた。立花社長が安楽との交渉権を獲得。先にヤクルト真中監督が引き、残った1枚を公言どおり右手で引いた。2球団が競合した2年前の東福岡・森、5球団が競合した昨年の桐光学園・松井裕に続き、3年連続の強運で引き当てた。「本当に緊張していました。良かった」と声を震わせた。

 引いた手は公言どおり右だったが、指名選手は公言とは違った。前日22日のスカウト会議後、早川アマ・スカウトグループマネジャーは「1位はある程度、絞りました。有原か岡本のどちらかでしょう」と明言。楽天が事前に指名選手を公言するのは極めて異例だった。安楽の「あ」の字も口にしていなかった。最終決定はドラフト当日と話してはいたが、果たして、有原でも、岡本でもなかった。

 実は、1位候補に安楽と、2位で指名した小野の2人も残していたという。午後1時からスカウト会議を行い、会場控室に入ったのはドラフト開始15分前の同4時45分。ギリギリまで話し合った。大久保監督は「最後の最後に『常勝軍団になるには必要。1位で』となった」と説明した。

 公言と違ったことに、立花社長は「その場にいなかったので早川さんの真意は分からない。でも、悪意はない」と釈明。ただ、安部井チーム統括本部長は「安楽の情報は外に出したくなかった」と言った。有原、岡本を公言したことで、他球団に影響を与えた可能性はある。結果的に、2人の名が“煙幕”となった。もちろん、公言を守る義務はない。ヤクルト単独指名も予想されたが、周囲を見事に裏切り、そして成功した。大久保監督は「もしかしたら(安楽の指名は)もう1球団。マックス3球団だろうと。でも、行こうと。たとえ、7球団でも行っていた」と胸を張った。クジ無敗の立花社長を擁し、したたかに大きな原石をつかんだ。【古川真弥】