<プロ野球ドラフト会議>◇23日

 宿願がかなった。巨人は智弁学園・岡本和真内野手(3年)の交渉権を単独で獲得した。高校通算73本塁打のスラッガーで、将来の4番候補として無限の可能性を秘めている。複数球団による抽選も覚悟していた原辰徳監督(56)は、岡本を三塁手として鍛えると明言。自身の系譜を継ぐ逸材を育てる。

 百戦錬磨の原監督も、平常心ではいられなかった。岡本の単独指名を決めた直後の会見。上気した顔で、珍しく早口になった。「無限の可能性を秘めている。ジャイアンツの、内野手で、右打ちの、4番候補。希望に満ちた状態で、門をたたいてもらうことを願う」と、カメラのレンズに向かって奈良の怪童に伝えた。

 高ぶるのも無理ない。この逸材は、自身が築き上げてきた像と、そっくりそのまま重ねることができる。「私も同じ内野手として、選手をやっていた。三塁を、と思っている。ファーストより、大型の三塁手。しっかり鍛える」と、早々と方針を明かした。チームにとって永遠の命題である、生え抜きの「4番サード」育成。岡本には、金看板をしょって立つ能力があると踏んでいる。

 高ぶる理由はもう1つあった。下馬評は複数球団の抽選。「もしかしたら単独、という話も聞いていた。しかし競合も覚悟していた」と明かした。楽天、ロッテが最後まで最上位に残している情報が消せなかった。楽天は、本番直前の会議で安楽に方針転換。ロッテも岡本の3球団競合を嫌い、回避した可能性が高い。早い時期から岡本を筆頭候補とし、誠実に練習をチェックしてきた。球団を挙げての信念が岩をも通し、駆け引きを制した格好となり、無風で交渉権を獲得した。

 大志を抱いて、奈良から上京するだけだ。「私も一緒になって、泥んこになって、汗を流していきたい。そうそう、岡本君のような選手は出てこない。スケールの大きな選手に育ってもらいたい。できる人は、順応も早めにする。可能性を信じて指導していきたい」と原監督。二人三脚で王道に導くつもりだ。【宮下敬至】