マー君がイチローに並んだ。楽天田中将大投手(22)が9日、仙台市内の球団事務所で契約交渉を行い、2000万円アップの年俸2億円プラス出来高払いで更改した。高卒4年目シーズンで2億円に届いた日本ハム・ダルビッシュには後れを取ったものの、同5年目での大台到達は、オリックス・イチロー(現マリナーズ)に続き2人目だ。この日、プロとしての第1歩を踏み出した日本ハム斎藤に大きな差をつけた。(金額は推定)

 田中は遠慮がちな問いに即答で返した。「ハッキリ聞いてくださいよ。2億円?

 いきました。良かったです」。世界のイチローと並ぶスピード出世。米田球団代表は「高卒から4年間、すべて規定投球回をクリアした。チーム、リーグの顔として、いろんな面で評価しました」と言った。楽天の枠を超え、日本球界を代表する金看板として。田中は大台を提示された。

 言葉の端々に自覚があふれていた。「自主トレでのケガがすべてです。完治しないまま投げて、負担がかかってしまった。それに尽きます。規定投球回をクリアしても、満足はできない」。見合う働きをしたとは思っていない。

 1月に右足首を痛めた。患部をかばいながらキャンプイン。ブルペン入りは第2クール初日と出遅れた。開幕から先発ローテーションを守ったが、7月に右大腿(だいたい)二頭筋挫傷で1カ月離脱した。復帰後の8月末には右大胸筋部分断裂も発症した。

 故障患部が体の右半分に集中したのは、シーズン出足のつまずきが響いた証拠だった。チームトップ11勝も、20試合、155イニング登板はプロ4年目で最少。「最低限の最低限の仕事です」と厳しかった。リーグ2位の8完投も、「年間通してパフォーマンスが出来ないと意味がない」と自らをバッサリ切り捨てた。

 最高の目標がいる。リーグトップ10完投のダルビッシュは、田中より1年早い高卒4年目で年俸2億円到達。07年に沢村賞を受賞した。比べられても「同じ土俵ではないです」と謙遜したが「軽々しく言えないが、沢村賞にからめる数字を取っていきたい。言っただけで終わらないように」と誓った。

 2億円更改と時を同じくして、早大・斎藤の日本ハム入団会見が行われていた。会見場へ向かう途中、田中は「テレビでちらっと」見届けた。甲子園でしのぎを削った佑ちゃんについての問いを「待ってましたよ」といい、笑顔で迎えた。「投げ合いは僕がコントロールできませんが、そうなったら頑張る。ファンの方が楽しみにしているんだし。同級生で一緒に頑張りたい」。88年生まれの顔として。胸を貸して勝つ。