マエケン、不安一掃!

 WBC日本代表候補の広島前田健太投手(24)が10日、紅白戦に先発して、2回1安打1失点だった。直球は最速144キロを出して、変化球もすべて試すなど上々の滑り出しだ。気温が低かった8日のシート打撃登板を回避してささやかれた不安説を一蹴する投球内容だった。

 前田健の表情は晴れ晴れしていた。日南に訪れた2000人の前で世界へ向けて助走を終えた。2回を1安打1失点。最速144キロを記録した球速を喜んだ。

 「132キロぐらいの感覚だった。140台が出るとは思っていなかった。6、7割ぐらいの気持ちで行っていたので」

 直球のキレは、この時期としては上々だった。初回から140キロ台をキープし、貫禄の空振りを奪った。

 結果や配球を気にしない。打者に試すことだけを考えた。3年目の捕手磯村にも「配球を考えてくれるのはありがたいけど、今日は試すことを考えている」と伝えていた。スライダー、ツーシームなど全球種を投げた上に、2回先頭の堂林にはセットから投球をするなど、想定していたプランを全36球に込めた。

 7日にブルペンで28球を投げた後、予定されていた8日のシート打撃登板を回避した。以降はキャッチボールを中心に調整してきた。最高気温が10度を切る日々が続いた。さらに関係者の話を総合すれば、右肩を中心に慣れない疲労を感じていたようだ。

 キャンプ初日からハイペースでブルペンに入ってきた。例年と異なる日々を乗り越えて紅白戦登板に至った。「ブルペンにも入れていなかったので、意外と球速が出て安心した」と明るい表情で振り返った。古沢投手コーチも「ボールの質も悪くない。今の時点では言うことはない」と話す。

 15日から始まる日本代表合宿まで残りわずか。紅白戦をもう1試合消化して、17日の広島との練習試合ではカープ投手として登板する予定だ。「実戦で投げることで感覚を取り戻していきたい」。不安を一掃し、世界の足音が聞こえてきた。【中牟田康】