日本にはこの男がいる。WBC日本代表候補の巨人杉内俊哉投手(32)が11日、サンマリン宮崎で行われた紅白戦に登板。1イニングわずか8球、鮮烈な実戦復帰を果たした。昨年9月29日のDeNA戦(横浜)以来となる実戦だったが、封印していたカーブも披露。視察した日本代表の山本浩二監督(66)と巨人原辰徳監督(54)を安心させた。

 杉内復活を印象づけたのは、大田に対して投げた2球目のカーブだった。昨年は肩への不安もあり封印していた球。だが、2度のWBCの経験で「曲がり球が有効だった」と感じていた。いわば世界と戦うためのボール。その封印を解いたことに、杉内の決意が表れていた。「久しぶりだったけど、3人で終われてホッとした。変化球はいい曲がりだったし、直球も指にかかっていた」。球速も想定どおりの137キロ。満足できる実戦復帰となった。

 杉内の存在は日本代表の中でも絶大だ。前回大会はキューバ、米国、韓国と勝負どころばかりで投げて完全に封じた。球数制限のある大会で、獅子奮迅の働きが期待できるのにはわけがある。1つにはストライクゾーンでどんどん勝負できること。昨年、巨人に入団した時も阿部と話したのはそのこと。「僕はムダ球が嫌い。なるべく早く勝負したいのでお願いします」と頭を下げたほど。この日もすべてストライク先行だった。

 もう1つは中継ぎとしての適性の高さがある。肩ができるのが速く、ブルペンでもすぐに捕手に座ってもらう。1月28日、今季初ブルペンの時もそうだった。捕手を座らせて投げたのはチームで一番早かった。エース級の力がありながら、スクランブルが利き、少ない球数で封じてくれる。WBCの球数制限ルールの中で、杉内ほどありがたい存在はない。

 この日はわずか8球で終わった。唯一、積み残したのは、WBC球のバラツキへの対応だ。日本の統一球に比べ、縫合が雑なため大きさにもバラツキを感じるという。「今日は新しいボールが1球しか来なかったんでね。小さいボールの後に大きいのが来たりすると違和感を感じる」と杉内。今後の課題は、その対応策を練ることぐらい。頼もしい男の復活劇だった。【竹内智信】<杉内の投球内容>◆打者

 実松(1)直

 球

 左飛◆打者

 大田(2)スライダー

 見逃しストライク(3)カーブ

 ボール(4)直

 球

 見逃しストライク(5)直

 球

 ボール(6)スライダー

 空振り三振◆打者

 松本哲(7)カーブ

 見逃しストライク(8)直

 球

 中飛