大谷よ、これが世界で戦うバッティングだ!

 第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表候補の日本ハム中田翔内野手(23)と稲葉篤紀内野手(40)が13日、場外弾を連発する圧巻のフリー打撃で沖縄・名護キャンプを打ち上げた。この日は2軍と一緒に練習。未来の侍ジャパン候補、ドラフト1位大谷翔平投手(18=花巻東)の目の前で現役侍の貫禄を示した。

 圧巻だった。沖縄の空を切り裂くように、打球が次々と場外へ消えていく。スーパールーキー大谷ら2軍選手の視線の先で、2人の侍ジャパン候補がフリー打撃でアーチ合戦を繰り広げた。63スイング中、場外弾1本を含む10本塁打を放ったベテラン稲葉に対して、中田は64スイングで21本塁打。そのうち4本が場外へ消え、1本がバックスクリーン上にあるスコアボードに直撃した。

 2人にとっては、明日15日から始まる代表合宿へ向け、最後の練習日。柵越えを量産した中田は「最後だから気持ちよく終わりたかった。何も考えず、角度を上げて飛ばすことだけ意識した」と汗を拭い、稲葉も「いい調整ができたと思います」と充実感いっぱいで名護キャンプを打ち上げた。

 練習後には大谷のフリー打撃を見守り「柔らかさがある。軸もぶれない」とルーキーを立てた稲葉だったが、現時点で力の差は歴然。新人時代の春季キャンプでパワフルな打撃を披露していた中田は「俺は、アーティストやからね。使いもんにならんアーティストやったけど(笑い)」とパワーだけに頼って2軍でくすぶっていた1年目を振り返り「(大谷は)逆方向へ打ててうらやましい」と新たな才能の出現を歓迎した。

 ただ、手本となる侍候補とはいえ、早めの行動を心掛ける稲葉とは対照的に、中田はまだ危ない面も。この日朝、スエット姿で選手宿舎のベランダから「おはよ~」と外で待つ報道陣に声を掛けたが、メニュー表に記載された練習開始時間が迫っていることを知らされて大慌て。結局、中田と稲葉だけは全体より開始が1時間遅いことが判明し「『中田、遅刻!』って書きたかったのに残念やったな」と高笑いしたが、10分で練習着に“早着替え”するなど一瞬ヒヤリとしたようだ。

 WBC本番へ向け始まるカウントダウン。「全力で悔いの残らないようやっていこうと思います」と稲葉。中田は「負けたくない気持ちを前面に出して、精いっぱいアピールしたい」。後輩たちに示した手本を置き土産に今日14日、いよいよ最終メンバー入りを懸けた代表合宿の地、宮崎へ向かう。【中島宙恵】