<WBC壮行試合:オーストラリア3-10日本>◇24日◇京セラドーム大阪

 マエケン、やっぱり不安だ…。右肩に不安を抱える前田健太投手(24)が先発したが3回3失点。2点リードの3回に逆転3ランを浴びるなど、投げ込み不足を露呈。2番手沢村拓一投手(24)ともに周囲の不安を払拭(ふっしょく)できなかった。

 前田健のコントロールが突如乱れた。3回だ。代名詞のスライダーが、すっぽ抜けと引っ掛けを繰り返した。8番から簡単に終えるはずが連続の四球。東尾投手総合コーチがベンチを出て状態を確認した。2死二、三塁となり右の強打者、3番ヒューズを迎えた。

 球場が静まり返った。4球目のスライダーが、やや外、やや高めの“打ちごろ”だった。フルスイング。紙一重の空振りにスタンドからため息が漏れた。フルカウントからスライダーで決めにいった。4球目と同じコース。打たれた瞬間、顔をゆがめた。3ランは左翼席中段まで届いた。「悔しかったですね。スライダーは修正していく。勝負どころで、いいスライダーを使えるように」と話したが、2回までは完璧に制御していた。一体、何があったのか。

 右肩の不安を一掃する登板、のはずだった。最速144キロ。本人が「だいぶ、仕上がってきた」と認めたように、周囲がホッとした直後の乱調だった。3回に投じた26球が制御不能になったのは、調整の絶対量と無縁ではない。宮崎合宿ではブルペン投球を1回しか行わず、47球しか投げていない。山本監督も「ちょっと、バテた。投げ込み不足で」と認めた。

 2番手沢村もベンチを慌てさせた。4回は連打に四球でいきなりの無死満塁。好調キープで「コントロールに苦しんではいなかったのですが」と本人も予想外だった。東尾コーチがこの日2度目となるマウンドへ。間合いが入って落ち着いたが、6回は2死無走者から一、二塁として降板。「立ち上がりが反省です。結果オーライでは、本番では許されない」と自覚していた。

 先発前田健、2番手沢村。紆余(うよ)曲折を経て、3月3日の1次ラウンド中国戦の布陣は決まった。前田健は「ブルペンでしっかり調整する」とし、沢村は「外低め、真っすぐでいつでもストライクを取れるように」とした。阿部も「もう少し、自分がしっかり操縦してあげないと」と引き締めた。代役はいない。中6日ある。あらゆる修正をして、何が何でも勝つ。【宮下敬至】