<WBC強化試合:日本6-1巨人>◇2月28日◇ヤフオクドーム

 阿部不在のピンチを救ったのは、若武者だった。WBC日本代表の坂本勇人内野手(24)が、4安打の大暴れ。中前打2本、左越え二塁打、右前打と、3方向に打ち分ける広角打法で、打線に火を付けた。3番でスタートも、不振から1番に変更。低調な打線の象徴的存在だったが、強化試合の最終戦で不安を払拭(ふっしょく)させた。本番でも、切り込み侍が打線をリードする。

 広角に打ち分けた4度のHランプが、本番へのゴーサインだった。切り込み侍の坂本が、4安打の固め打ち。阿部不在の重苦しい雰囲気を快音で払拭した。「阿部さんがいなかったので、みんながキャプテンという気持ちでやれた。みんなで絶対勝つんだ、というふうにやれば、今日みたいな試合ができる」とナイン全員の気持ちを代弁した。

 基本に立ち返った結果だった。4安打の内訳は、中堅2本、左翼と右翼に1本ずつ。引っ張りがヒットコースの大半を占める男が、広角にヒットを並べた。「センター返しを心掛けた結果だと思います」。前日27日のヤフオクドームでの全体練習では、ホワイトボードに記された「センター返し」指令を忠実に守った。広角への4本は、その証しだった。

 最終戦を前に、打撃フォームにもメスを入れた。立浪打撃コーチから、昨年の打撃フォームの映像を見せられ、スタンスの広さを指摘された。ほんの数センチだけスタンスを狭めた新打法だったが、結果で成果を示した。「(打撃の)感じは悪くないんですけど…。やっぱり結果。結果が出れば気持ちも楽になる」。最も欲しかった結果を手に、本番に臨む。

 宮崎合宿中、低調気味の打線を見かね、山本監督から「坂本、しっかり頼むぞ。オレを安心させてくれ」と言われた。坂本にとって、山本監督は北京のプレ五輪に招集された時からの恩人。「1年目の僕に温かい言葉を掛けてくれた。僕がしっかり打って、安心させないと」と自らに重圧をかけた。4安打を放ち、本番へ絶好調で突入する。「本戦に入ったら、もっともっと打てるように」。若き切り込み侍は、どこまでも貪欲だった。【久保賢吾】