<WBC:日本3-6キューバ>◇6日◇1次ラウンドA組◇ヤフオクドーム

 日本代表のエース田中将大投手(24)が、復活の兆しを見せた。2番手としてリリーフ登板。いきなり連打を浴び、わずか5球で追加点を許した。だが、そこからカーブを使うなどして立て直し、5者連続三振など2回を投げて6三振を奪った。試合後には失点を反省しつつも、手ごたえも口にした。今後の起用法は未定だが、厳しい2次ラウンドを勝ち抜くためにも、田中の快投は欠かせない。

 田中が4回のマウンドに立った。公式戦では09年7月20日、ソフトバンク戦以来の救援登板だった。2日のブラジル戦に先発してから中3日だった。キューバは3番、フェルナンデスから。目深にかぶったキャップの奥から相手をにらみつけた。「いろいろあったので、最初は力みがあった」。初球の148キロ直球が抜けた。

 2ボール1ストライクからの4球目。147キロがシュート回転した。高速で中前に運ばれた。ボール交換を申し出た。WBC球をこねて仕切り直した。4番セペダの初球。132キロスライダーが甘く入った。打球は瞬く間に右中間を破った。試合の流れを引き込めず、相手に傾かせる重い失点だった。

 6番A・デスパイネにも直球系を安打され、1死一、三塁になった。東尾コーチが心配そうにマウンドに来た。輪が解けた。「勇気がいったが」と振り返った。3回に特大ソロを放ったトマスへの初球。ここで重い決断をした。

 114キロのカーブを投げた。高速と低速、2種類のカーブを持つ。投じた低速のカーブは、昨シーズン中、1球も投げなかった球種だった。「相手の反応を見て、有効と分かった。途中からしっかり腕も振れた」と冷静になれた。5回。打者3人に対し、2球目までに、このカーブを見せた。

 真っすぐにめっぽう強い相手の体を浮かせ、目線をずらした。「ストライクからボールになる変化球を、振ってくれた。今までと違う手ごたえがあった」と言った。変化球主体で、ストライク先行で、最後はワンバウンドを振らせるスタイルが出来た。2回を投げ、奪ったアウト6個はすべて三振だった。

 徳俵に追い込まれて、捨てたはずの緩いカーブに光明を見いだした。「点を取られたので、何も言いようがない」は正直な第一声だった。ただ一方で「調子は上がっている。次、取られないように。引き締めてやっていく」とも言った。山本監督は「そんなに悪くはない。次、中継ぎか先発かは分からないが」と言った。持ち場はどうでもいい。借りを返す。【宮下敬至】